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宅建からダブルライセンスに挑戦しよう!【次に取るおすすめ資格8選】

更新日:2024年6月27日

宅建からのダブルライセンス・トリプルライセンス

 宅建の資格は、不動産資格の筆頭資格であり、法律資格の登竜門とも言われる資格です。

 このため、宅建に関連する資格は数多くあり、宅建を取得することで、次から次へと広がりを見せてきますので、ダブルライセンス・トリプルライセンスへと挑戦意欲も沸いてきますね

 実務上も、資格を増やすことでお客様からの信頼や、同僚・上司からの信頼が得られますし、転職や独立といった新たなビジネスチャンスも生まれてきます。

 このページでは、宅建と一緒に持っておくと良いダブルライセンス・トリプルライセンスにおすすめの資格について、私自身の経験も踏まえながら紹介しますので、ぜひ参考にしてください!

【執筆者】
㈱モアライセンス代表 大西雅明(宅建士)

市役所に22年間勤めた元公務員。宅建、行政書士、司法書士、土地家屋調査士などの国家資格に合格し、15年以上にわたって当サイトで情報発信している。
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宅建の次に取る資格は?狙えるダブルライセンス

 宅建を取った後、ダブルライセンス・トリプルライセンスを目指す場合、どのような資格が候補に挙がってくるのでしょうか。

 宅建は、不動産資格の筆頭資格であり、法律資格の登竜門であることから、やはり不動産系・法律系資格との相性がいいですね。

 また、業務内容の関連性からは、金融・労務系の資格も候補に挙がってきます。

宅建の次に狙えるダブルライセンスの候補
  • 相性のいい不動産資格・・・管理業務主任者、マンション管理士、賃貸不動産経営管理士、土地家屋調査士(測量士補)
  • 試験範囲の関連性が高い法律資格・・・行政書士、司法書士
  • 実務上の関係性が強い金融・労務資格・・・ファイナンシャル・プランナー、社労士

相性のいい不動産資格

 不動産資格では、宅建・管理業務主任者・マンション管理士3大資格として挙げられますが、さらにもうひとつ、賃貸不動産経営管理士も加えて不動産4大資格と呼ばれる場合もあります。

 さらに言えば、土地家屋調査士・測量士補といった資格も、不動産の関連資格の範疇に含まれてきますね。

試験範囲の関連性が高い法律資格

 法律資格では、宅建と関連性の高いものとして、行政書士・司法書士が挙げられます。

 法律資格だからといって、司法試験や弁理士までいくと手を広げすぎかもしれませんが、行政書士・司法書士までなら、ダブルライセンス・トリプルライセンスの視野に入ってくるのではないでしょうか。

実務上の関係性が強い金融・労務資格

 また、ファイナンシャル・プランナーや社労士といった資格も、宅建との関係性はありますが、少々毛色が違う資格になってきます。

 ですので、宅建で身につけた知識とは全く異なる分野の知識も求められることになりますが、実務上の関係性は強い資格と言えます。

私が取得してきた資格・今後取得を目指す資格

 私自身は、公務員として市役所に勤めながら、一番最初に宅建の資格を取得したあと、さらなる資格取得を目指し、土地家屋調査士・測量士補、行政書士、管理業務主任者、マンション管理士、賃貸不動産経営管理士と、順に資格試験に挑戦し、合格してきました。

 そして、市役所を辞めて司法書士試験に合格し、司法書士事務所を開業しました。

 さらに次は、FP社労士にも挑戦しようと考えています。

 私は22年間、公務員として市役所に勤めていましたので、基本的には終身雇用を考えていましたが、万が一、退職せざるを得ない状況になったとしても対応できるように、そしてまた、時と場合によっては、自ら仕事を辞め、資格を活かして働いてみたいという思いを心の底に持っていました。

 もちろん、定年退職後の再就職にも活かすことができるという考えもありました。

 ただし、ただの資格マニアのように見境なく資格試験に挑戦してきたわけではなく、職務上、必要だと感じたからこそ資格の勉強をしたというのが実状です。

 市役所で働く公務員に、どうして資格が必要なのかと疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、市役所の仕事は非常に多岐にわたっています。

 一般の事務職であっても、建築・土木の部署や不動産の部署、法務の部署や税務の部署、会計の部署など、どんな部署にでも数年ごとに異動させられます。

 このため、少なくとも、法律系・不動産系・会計系の資格ジャンルについては、すべてが業務に直接的に関連する資格と言えるわけです。

 ただし、実際のところ、公務員の方が、このような資格を揃えようとするのは極めてレアケースかと思います。

どの資格まで視野に入れるか

 話を戻すと、民間の宅建業に従事されている方が、最初に宅建を取得し、その後、ダブルライセンス・トリプルライセンスを考える場合には、実務を考慮すると、あまり手を広げすぎても知識を維持することはできませんので、実務に関係する範囲にとどめておいた方がいいと思います。

 宅建業に従事する方なら、不動産資格を極めるため、宅建・管理業務主任者・マンション管理士のトリプルライセンスあたりまで、もしくは、もう一つついでに、賃貸不動産経営管理士の4大資格まで目指すのが順当なところではないでしょうか。

 あるいは、不動産資格は宅建だけに留めておいて、視野を広げ、得意分野を拡大するために、少しジャンルの異なるファイナンシャル・プランナーや社労士などを目指すのも、いいかもしれませんね。

 または、転職や独立も視野に入れて土地家屋調査士や司法書士・行政書士といった、自分で看板を掲げて独立できるような資格を目指すのも、考え方のひとつかもしれません。

宅建とのダブルライセンスにおすすめの資格8選

 それでは、宅建からのダブルライセンス・トリプルライセンスが目指せるおすすめの資格について、順に紹介していきたいと思います。

No.1:管理業務主任者

管理業務主任者試験の実施団体「一般社団法人 マンション管理業協会」公式サイト
一般社団法人 マンション管理業協会 公式サイト

 宅建とのダブルライセンスの候補として筆頭に上がってくるのが、この管理業務主任者ではないでしょうか。

 不動産会社に勤める方にとっては、業務と直接的に関わっていますし、試験科目も宅建に共通する部分が多くあります

 共通する科目というのは、まず、民法と区分所有法は、がっつりと被ります。その他、出題数は少ないですが、借地借家法・宅建業法・不動産登記法といった法律も、共通する科目として挙げられますね。

管理業務主任者とは

 管理業務主任者は、マンション管理のエキスパートとして、マンションの管理業務を行う国家資格です。

 マンション管理業者は、管理を受託する管理組合の数に応じて、30管理組合ごとに1名以上の「管理業務主任者」を設置することが義務付けられています。

 また、この管理業務のなかには、管理業務主任者にしかできない4つの独占業務があるため、管理業務主任者は、マンション管理業務になくてはならない非常に重要な役割を担っています。

資格の取得方法

 管理業務主任者として業務を行うためには、1年に1回実施される管理業務主任者試験に合格した後に、国土交通大臣の登録を受け、管理業務主任者証の交付を受ける必要があります。

 この登録を受けるためには、マンション管理の実務経験が2年以上あるか、又は、2日間の登録実務講習を受講すること等が要件とされています。

試験科目

 四肢択一(マークシート) 50問

分野 主な科目 出題数
法令系科目 民法、その他法令 10問
区分所有法 7問
マンション標準管理規約 6問
マンション管理適正化法 5問
管理実務・会計系科目 管理実務・会計 9問 
建築、設備系科目 建築、設備 13問

試験日程

 例年、12月の第1日曜日に実施

合格に必要な勉強時間・勉強期間

 一般的に、初学者が管理業務主任者試験に合格するためには、300時間程度の勉強時間が必要と言われています。

 この場合、1日に1~2時間程度の勉強時間であれば、半年間程度というのが標準的な勉強期間になってきます。

 ただし、私の経験上は、宅建試験の合格者であれば、初学者の3分の1ぐらい(100時間)の勉強時間があれば、十分合格できるのではないかと思います。(私の場合は、約80時間の勉強時間でした。)

難易度・合格率

 受験者数はおおむね1万5千人程度で緩やかに減少傾向にあり、合格率は、おおむね20%程度で推移しています。

 国家資格としてはそれほど高くない難易度ですね。

No.2:マンション管理士

マンション管理士試験の実施団体「公益財団法人マンション管理センター」公式サイト
公益財団法人 マンション管理センター 公式サイト

 マンション管理士は、管理業務主任者と試験科目がほぼ共通していることから、管理業務主任者と並んで、宅建のダブルライセンス候補となってくる資格です。

 資格名の響きから、管理業務主任者よりも、なんとなく格好いいですし、世間の認知度も、管理業務主任者より高い印象があります。

 管理業務主任者と言っても、え?なにそれ?という反応が大多数ですが、マンション管理士と言えば、なんとなく分かってもらえたり、どこかで聞いたことがあるといった反応をしてもらえることも多いです。

 ただし、不動産業界で働くうえでの実際の必要性からいうと、管理業務主任者の方が上なんでしょうね。管理業務主任者には独占業務がありますが、マンション管理士にはありませんから。

マンション管理士とは

 マンション管理士は、マンションに関する高度な専門知識をもって、マンション管理組合や区分所有者からの相談を受け、管理組合の運営や管理規約の改正、大規模修繕工事などマンションの管理に関する様々な問題について、指導やアドバイスを行うことを業務としており、ひとことで言えば、マンション管理のコンサルタントといえます。

 マンション管理士は、「名称独占資格」と言われるもので、宅建士や管理業務主任者のような独占業務はありません

 また、業者への設置義務もありませんが、資格を有することにより、マンション管理会社においてアドバイザーとして信頼度が上がることや、コンサルタントとして独立開業することも可能な資格です。

資格の取得方法

 マンション管理士になるためには、1年に1回実施されるマンション管理士試験に合格した後に、国土交通大臣の登録を受ける必要があります。そして、登録を受けるとマンション管理士登録証が交付されます。

 なお、マンション管理士の登録を受けるに当たっては、宅建士や管理業務主任者とは違って、実務経験や登録実務講習などは必要とされていません。

試験科目

 四肢択一(マークシート) 50問

項目 主な科目 出題数
(1)マンションの管理に関する法令及び実務に関すること 区分所有法 12問
マンション標準管理規約 8問
民法、その他法令 6問
(2)管理組合の運営の円滑化に関すること 管理実務 2問
会計 2問
(3)マンションの建物及び附属施設の構造及び設備に関すること 建築、設備 15問
(4)マンションの管理の適正化の推進に関する法律に関すること マンション管理適正化法 5問
合計 50問

試験日程

例年、11月の最終日曜日(第4又は第5日曜日)に実施

合格に必要な勉強時間・勉強期間

 一般的に、初学者がマンション管理士試験に合格するためには、500時間程度の学習時間が必要と言われています。

 この場合、1日に1~3時間程度の勉強時間であれば、半年~1年程度というのが標準的な勉強期間となってきます。

 ただし、宅建試験の合格者であれば、半分程度(250時間)の勉強時間で足りるのではないかと思います。(私の場合は、約200時間でした。)

難易度・合格率

 受験者数は、おおむね1万2千人程度で緩やかに減少傾向にあり、合格率は、おおむね8~9%程度で推移しています。

 10%を切る合格率ですし、管理業務主任者に比べても、難関資格といえます。

No.3:賃貸不動産経営管理士

賃貸不動産経営管理士試験の実施団体「一般社団法人賃貸不動産経営管理士協議会」公式サイト
一般社団法人 賃貸不動産経営管理士協議会 公式サイト

 賃貸不動産経営管理士は、2020年度までは民間資格(公的資格)でしたが、2020年6月に「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」が成立し、2021年4月21日付けの国土交通省令により、2021年度から国家資格になりました

 宅建を取得した方がダブルライセンス、トリプルライセンスを目指す資格として、管理業務主任者・マンション管理士と並んで候補に挙がってくる資格ですね。

賃貸不動産経営管理士とは

 賃貸不動産経営管理士は、賃貸マンションや賃貸アパートなど、賃貸住宅の管理に関する知識・技能・倫理観を持った専門家です。

 賃貸マンションやアパートなどの賃貸管理業務は、賃貸不動産の管理を家主から受託する契約から始まり、入居者の募集や契約業務により希望者を入居させ、建物の維持管理や不具合の対応、原状回復工事など様々な業務があるほか、家主の賃貸経営に関する支援もその業務の一環と捉えられています。

資格の取得方法

 1年に1回実施される賃貸不動産経営管理士試験に合格した後に、登録手続を行うことで、賃貸不動産経営管理士に認定され、賃貸不動産経営管理士証の交付を受けることができます。

 この登録を受けるためには、賃貸不動産関連業務の2年以上の実務経験があること、又は、実務経験がない場合は「実務講習」を受講すること、のいずれかの要件を満たす必要があります。

試験科目

 四肢択一(マークシート) 50問

試験科目 出題内容
イ 管理受託契約に関する事項

管理受託契約の締結前の書面の交付、管理受託契約の締結時の書面の交付、管理受託契約における受任者の権利・義務、賃貸住宅標準管理委託契約書 等

ロ 管理業務として行う賃貸住宅の維持保全に関する事項

建築物の構造及び概要、建築設備の概要、賃貸住宅の維持保全に関する管理実務及び知識、原状回復 等

ハ 家賃、敷金、共益費その他の金銭の管理に関する事項

家賃、敷金、共益費その他の金銭の意義、分別管理 等

ニ 賃貸住宅の賃貸借に関する事項

賃貸借契約の成立、契約期間と更新、賃貸借契約の終了、保証、賃貸住宅標準契約書、サブリース住宅標準契約書 等

ホ 法に関する事項

賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律、サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン、特定賃貸借標準契約書 等

へ イからホまでに掲げるもののほか、管理業務その他の賃貸住宅の管理の実務に関する事項

賃貸不動産の管理業務を行うに当たり関連する法令、賃貸不動産管理の意義と社会的情勢、賃貸不動産経営管理士のあり方、入居者の募集、賃貸業への支援業務 等


試験日程

例年、11月の第3日曜日に実施

合格に必要な勉強時間・勉強期間

 一般的には、初学者が賃貸不動産経営管理士試験に合格するためには、100時間程度の勉強時間が必要と言われています。

 この場合、1日に1~3時間程度の勉強時間であれば、1ヶ月~3ヶ月程度というのが標準的な勉強期間となってきます。

 ただし、宅建試験の合格者であれば、半分程度(50時間)ぐらいの勉強時間があれば十分合格できると思います。(私の場合は30時間でした。)

難易度・合格率

 受験者数は、2万人程度で急増中です。

 合格率は、もともと50%程度で推移していましたが、国家資格化に向けた動きの中で、2019年度は36.8%、そして2020年度は29.8%にまで下がり、国家資格となった2021年度は31.5%と下げ止まり、その後もおおむね30%程度で推移しています。

No.4:土地家屋調査士・測量士補

法務省土地家屋調査士試験公式サイト
法務省 土地家屋調査士試験 公式サイト

 土地家屋調査士は、上記の不動産業関連資格とはガラッと毛色が異なる資格です。

 確かに、宅建業に深く関わる資格であり、家を新築した場合や、分譲開発などで土地の分筆や地目変更をする場合などに、必ずお世話になる士業の先生です。

 宅建業に携わる者として、不動産登記法(表示に関する登記)について深く学ぶことは損にはなりませんが、やはり、宅建業者に勤める人がダブルライセンスを目指す資格としての優先順位は低いかと思います。

 ですので、どちらかと言えば、不動産業界と関わりある業界で独立開業を目指す場合に取得するのがいいのではないでしょうか。

 なお、土地家屋調査士試験を受ける前に、午前試験の免除を受けるために測量士補の資格を事前に取得しておく方が多いです。(測量士、測量士補、一級建築士又は二級建築士の資格がある方は、午前の部が免除となります。この中で、最も取得しやすいのが測量士補です。)

土地家屋調査士とは

 土地家屋調査士は、不動産(土地又は建物)の所有者に代理して、不動産の「表示に関する登記」手続を行うこと、及び、この登記手続に必要な不動産の調査や測量を行うことを主な業務とする資格です。

 この「表示に関する登記」手続の代理は、土地家屋調査士だけが行うことができる独占業務とされています。

資格の取得方法

 土地家屋調査士になるためには、1年に1回実施される土地家屋調査士試験に合格した後、各都道府県の土地家屋調査士会に入会し、日本土地家屋調査士会連合会に備える土地家屋調査士名簿に登録を受ける必要があります。

試験科目

<筆記試験>

午前の部【測量】
多肢択一式(マークシート10問)、記述式(1問)

※ 測量士、測量士補、一級建築士又は二級建築士の資格がある方は、午前の部が免除となります。例年、午前の部を受験する人は、ほぼいないようです。

午後の部【民法、登記申請手続・審査請求手続、その他】
多肢択一式(マークシート20問)、記述式(2問)

<口述試験(筆記試験合格者のみ)>

 登記申請手続・審査請求手続、その他

試験日程

<筆記試験>

 例年、10月の第3日曜日に実施

<口述試験(筆記試験合格者のみ)>

 1月の後半に実施

合格に必要な勉強時間・勉強期間

 一般的に、初学者が土地家屋調査士試験に合格するためには1,000時間程度の勉強時間が必要と言われています。

 この場合、1日に2~3時間程度の勉強時間であれば、1年~1年半程度というのが標準的な勉強期間となってきます。

 土地家屋調査士試験に関しては、宅建試験の合格者だからといって、勉強時間が少なくて済むようなことはありません

 必要とされる知識が大きく異なりますし、どちらかといえば、記述式対策がメインとなってきますので、図面を描いたり、電卓で座標を求めたり、登記申請書を書いたり、といった問題演習が、試験対策の大きな比重を占める試験です。(私の場合も、相場どおり約1,000時間の勉強時間を要しました。)

なお、ここには、午前試験(測量科目)の勉強時間は含まれていませんので、土地家屋調査士の午前試験の免除資格を保有されていない方は、別途、測量士補試験を受験するための勉強時間(約200時間)が必要となります。

難易度・合格率

 受験者数は、おおむね4千人程度で緩やかに減少傾向にあり、合格率は、おおむね8~9%程度で推移しています。10%を切る合格率ですので、高い難易度と言えます。

No.5:行政書士

一般財団法人行政書士試験研究センター公式サイト
一般財団法人 行政書士試験研究センター 公式サイト

 行政書士の資格は、宅建業の実務のうえで直接役に立つような資格ではないかもしれません。

 しかし、宅建試験で重要な科目である「民法」が、行政書士試験でも重要科目となっていることから、試験科目のうえでの親和性が高い資格であると言えます。

 また、宅建業に携わるうえで、行政書士試験の勉強を通じて法律に親しみ、法的な思考能力を身につけることができるという意味で、取っておいて損はない資格だと思います。

 事務的な仕事をする人なら誰でも、行政書士の勉強は役に立つはずです。どんな仕事をするにしても、法律には関わることになりますからね。

 それに、行政書士を取得すれば、ちょっとした”法律家になったような気分”も味わえると思います。(行政書士は法律家ではありません。)

行政書士とは

 行政書士は、行政手続の専門家であり、「許認可のプロフェッショナル」です。国の管轄でいうと、「総務省」の管轄になります。

 行政書士は、官公署に提出する許認可等の書類の作成やその手続の代理、権利義務又は事実証明に関する書類の作成などを、その業務としています。

資格の取得方法

 行政書士になるには、行政書士になるための資格を取得してから、日本行政書士会連合会に登録するという2段階の手続きが必要となります。

 この行政書士になる資格を取得するための最も一般的な方法は、1年に1回実施される行政書士試験に合格することです。

 その他の方法としては、国家公務員、地方公務員又は一定の独立行政法人の職員として、行政事務に20年以上(高卒以上の学歴がある場合17年以上)従事することによっても、行政書士の資格を取得することができます。

 また、弁護士、弁理士、公認会計士又は税理士のいずれかの国家資格を取得することによっても、行政書士の資格を得ることができます。

 上記のいずれかの方法によって行政書士となる資格を取得した後に、各都道府県を通じて「日本行政書士会連合会」に登録することで、行政書士として業務を行うことができるようになります。

試験科目

令和6年度(2024年度)からの試験科目の変更について

2024年度(令和6年度)から、試験科目が若干変更され、これまで「一般知識等」と呼んでいた科目が「基礎知識」になります。

「一般知識等」科目内の「政治・経済・社会」が「一般知識」になり、「行政書士法等の諸法令」が新たに明記されました。

令和5年度まで 令和6年度
一般知識等 政治・経済・社会 基礎知識 一般知識
行政書士法等の諸法令
情報通信・個人情報保護 情報通信・個人情報保護
文章理解 文章理解

 下記では、この変更を反映して記載しています。

法令科目:択一式(5肢択一式・多肢選択式)(マークシート方式)及び記述式(40字程度)

一般知識:5肢択一式(マークシート方式)

試験科目【法令等】 5肢択一式 多肢選択式 記述式
憲法 5問 1問
行政法 19問 2問 1問
民法 9問 2問
商法(会社法) 5問
基礎法学 2問
合計 46問

試験科目【基礎知識】 択一式
一般知識 2023年度試験までの「政治・経済・社会」で出題されていた7問が2つの科目に割り振られるものと予想されます。
行政書士法等
情報通信・個人情報保護 4問
文章理解 3問
合計 14問

試験日程

例年、11月の第2日曜日に実施

合格に必要な勉強時間・勉強期間

 一般的に、初学者が行政書士試験に合格するためには、500時間(~800時間)程度の勉強時間が必要と言われています。

 この場合、1日に1~3時間の勉強時間の場合、半年から1年半程度というのが標準的な勉強期間となってきます。

 ただし、宅建試験の合格者であれば、重要な民法の科目が学習済みですので、4分の3~5分の4ぐらい(400時間ぐらい)が目安になるかと思います。(私の場合は、さらに行政法についても実務経験がありましたので、約250時間でした。)

難易度・合格率

 受験者数は、おおむね4万人程度で緩やかに減少傾向にあり、合格率は、おおむね10%前後で推移しています。10%という数値は、高い難易度と言えます。

No.6:司法書士

法務省司法書士試験公式サイト
法務省 司法書士試験 公式サイト

 司法書士は、宅建業と密接に関係する資格ですね。土地建物について売買契約が成立した際には所有権移転や抵当権設定などの登記で、お世話になる士業の先生です。

 試験科目としては、宅建で重要な科目「民法」が、司法書士でも最重要科目ですので、その意味では、宅建で学んだ知識が活かせる資格ではあります。

 しかし、宅建業者に勤める方がダブルライセンスを目指す資格としては、土地家屋調査士と同様に、優先順位は低いかもしれません。

 やはり、司法書士の資格を取得するのなら、その専門知識を活かした職に就いたり、独立開業を目指したりするのがいいように思います。

 それを見据えるならば、宅建業の実務を身につけたうえで、司法書士の独立開業ができれば、司法書士としてアドバンテージが得られるはずです。

司法書士とは

 司法書士とは、弁護士のような敷居の高い法律家ではなく、「市民に身近な法律家」として活躍できる資格です。

 司法書士の業務は、これまでは不動産登記・商業登記の「登記業務」が中心でしたが、法改正により、簡易裁判所の訴訟代理権が与えられ(認定司法書士)、弁護士同様に裁判業務を行うこともできるようになりました。

 さらに、高齢化社会の進展により導入された「成年後見制度」などにおいても、活躍の場を広げています。

資格の取得方法

 司法書士になるためには、1年に1回実施される司法書士試験に合格した後に、各種の研修(中央新人研修、ブロック新人研修、配属研修、特別研修)を受講したうえで、司法書士会に入会し、日本司法書士会連合会に備える司法書士名簿に登録を受ける必要があります。

試験科目

<筆記試験>

 多肢択一式(マークシート方式)70問(午前の部:35問、午後の部:35問)、記述式2問

午前/午後 出題形式 試験科目 出題数 合計
午前の部
(9時30分~11時30分)
2時間
択一式 憲法 3問 35問
民法 20問
商法(会社法) 9問
刑法 3問
午後の部
(13時~16時)
3時間
択一式 不動産登記法 16問 35問
商業登記法 8問
供託法 3問
民事訴訟法 5問
民事執行法 1問
民事保全法 1問
司法書士法 1問
記述式 不動産登記法 1問 2問
商業登記法 1問

<口述試験(筆記試験合格者のみ)>

 不動産登記法、商業登記法、司法書士法の3科目


試験日程

<筆記試験>

 例年、7月の第1日曜日に実施

<口述試験(筆記試験合格者のみ)>

 例年、10月中旬ごろ実施

合格に必要な勉強時間・勉強期間

 一般的に、司法書士試験に合格するためには、3,000時間の勉強時間が必要と言われています。もし1日に3時間の勉強時間なら3年かかることになりますし、1日に6時間勉強したとしても、1年半程度はかかるという計算になります。

 司法書士試験に関しては、宅建試験の合格者というアドバンテージは、あるにはあるのですが、結局は、トータルの勉強時間に大きな影響を及ぼすほどのものではないと考えていただいた方がよいかと思います。

 宅建試験の重要科目であった「民法」は、司法書士試験においても最重要科目ですので、その意味ではアドバンテージがあるのですが、そもそも3,000時間の勉強時間が必要とされる司法書士試験においては、大差はないということです。

難易度・合格率

 受験者数は、おおむね1万4千人程度で、緩やかに減少傾向にあり、合格率は、おおむね4~5%程度で推移しています。非常に高い難易度です。

No.7:ファイナンシャル・プランナー(FP技能士2級)

NPO法人日本FP協会公式サイト
NPO法人 日本FP協会 公式サイト

 FPは、お金のエキスパートです。その知識に基づき、不動産取得資金の調達やライフプラン、不動産投資などのコンサルとして、お客様にアドバイスできるようになります。

 このため、宅建業者で働く宅建士にとって、とても役に立つ資格と言えますね。

 また、不動産や相続に関しては、宅建の試験範囲との重複もあります。

 なお、仕事に活かせるレベルは2級以上と言われていますので、以下では、2級のFP技能士について記載していきます。

資格の取得方法

 ファイナンシャル・プランナー(FP2級)の資格を取得するためには、2級FP技能検定試験に合格する必要があります。

 2級FP技能検定には受験資格が定められており、「3級FP技能検定の合格者」、「FP協会のAFP認定研修の修了者」、「FP業務に関する2年以上の実務経験者」、「金融渉外技能審査(旧 金財FP)3級の合格者」のいずれかに該当する必要があります。

試験科目

学科試験(午前) 筆記試験(マークシート方式) 四肢択一式 60問
実技試験(午後) 筆記試験(記述式)※選択問題、計算問題

  • ライフプランニングと資金計画
  • リスク管理
  • 金融資産運用
  • タックスプランニング
  • 不動産
  • 相続・事業承継

試験日程

 例年、年に3回実施されています。
 (5月の第4日曜日、9月の第2日曜日、1月の第4日曜日)

合格に必要な勉強時間

 一般に、ファイナンシャル・プランナー(FP技能士2級)に合格するためには、200時間(150~300時間)の勉強時間が必要と言われています。

 ファイナンシャル・プランナーの試験科目の中で、不動産や相続・事業承継に関しては、宅建の試験範囲との重複があるため、宅建合格者には有利ですね。

難易度・合格率

 学科試験:40%程度
 実技試験:50%程度

※ FP試験は「FP協会」と「きんざい」の2団体で実施されており、合格率に差がありますが、その2団体の平均合格率を記載しています。

No.8:社会保険労務士(社労士)

全国社会保険労務士会連合会 試験センター公式サイト
全国社会保険労務士会連合会 試験センター 公式サイト

 社労士は、法律系資格に分類されるとはいえ、ここまでに出てきた行政書士、司法書士などの法律系資格とは毛色が異なる資格です。

 社労士は、労働や社会保険、そして、人事や労務管理に関するプロフェッショナルで、「”人”に関する専門家」と呼ばれています。

 このため、宅建業そのものとの関連性は低い資格とも言えますが、会社という組織で働く以上は、人事・労務といったものは、自分自身の労働と直接関係があるものです。

 また、お客様との営業の面では、大きな買い物をするにあたり、将来の年金や社会保険などについての専門知識を備えていることは有利に働くことは間違いないはずです。

試験科目

・選択式(マークシート)(午前) 8問
・択一式(マークシート)(午後) 70問

試験科目 選択式 択一式
労働基準法・労働安全衛生法 1問 10問
労働者災害補償保険法(徴収法を含む) 1問 10問
雇用保険法(徴収法を含む) 1問 10問
労務管理その他の労働に関する一般常識 1問 10問
社会保険に関する一般常識 1問
健康保険法 1問 10問
厚生年金保険法 1問 10問
国民年金法 1問 10問
合計  8問 70問

試験日程

 例年、8月の第4日曜日に実施

合格に必要な勉強時間・勉強期間

 一般的に、初学者が社労士試験に合格するためには1,000時間程度の勉強時間が必要と言われています。

 この場合、1日に2~3時間程度の勉強時間であれば、1年~1年半程度というのが標準的な勉強期間となってきます。

 試験科目を見ていただけば明らかですが、宅建試験との重複はありませんので、宅建試験の合格者であっても、完全な初学者として勉強する必要がある試験です。

難易度・合格率

 受験者数は、およそ4万人で、合格率は、6%前後となっています。かなりの難関資格です。

宅建からのダブルライセンス・トリプルライセンス【まとめ】

 以上、宅建の資格を取った後に、ダブルライセンス・トリプルライセンスを狙える資格や役に立つ資格について紹介してきました。

 それでは最後に、一覧表に整理しておきますので、これを眺めながら、ダブルライセンス・トリプルライセンスを検討してみてください!

資格名 日程 出題方式 目安勉強時間 受験者数 難易度・合格率
管理業務主任者 12月
第1日曜日
マークシート 300時間 1万5千人程度 20%程度
マンション管理士 11月
最終日曜日
マークシート 500時間 1万2千人程度 8~9%程度
賃貸不動産経営管理士 11月
第3日曜日
マークシート 100時間 3万人程度 30%程度
土地家屋調査士 【筆記】
10月
第3日曜日

【口述】
1月後半
【筆記(午前)】※測量士補等で免除
マークシート
記述式

【筆記(午後)】
マークシート
記述式

【口述】筆記合格者のみ
1,000時間 4千人程度 8~9%程度
行政書士 11月
第2日曜日
【法令科目】
マークシート
記述式(40字程度)

【基礎知識】
マークシート
500~800時間 4万人程度 10%前後
司法書士 【筆記】
7月
第1日曜日

【口述】
10月中旬
【筆記】
マークシート
記述式

【口述】筆記合格者のみ
3,000時間 1万4千人程度 4~5%程度
ファイナンシャル・プランナー(FP技能士2級) 年に3回
・5月の第4日曜日
・9月の第2日曜日
・1月の第4日曜日
【学科試験】
マークシート

【実技試験】
筆記試験(記述式)
150~300時間 年間18万人 学科:40%程度
実技:50%程度
社労士 8月
第4日曜日
マークシート 1,000時間 4万人 6%前後

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