更新日:2023年9月12日
賃貸不動産経営管理士の資格は、社会的な需要の高まりと、2021年度の国家資格化に伴って急速に人気が高まり、ここ数年、うなぎ上りで受験者数が増加しています。
不動産業に関連する資格としては、宅建士・管理業務主任者・マンション管理士で不動産業3大資格と呼ばれますが、賃貸不動産経営管理士の人気の高まりを受けて、4大資格になりつつありますね。
このような不動産業における資格の中で、新たに賃貸不動産経営管理士の資格に興味を持ち、簡単に合格できる試験なのか、宅建や管理業務主任者などと比べて難易度はどうなのかなど、気になっている方も多いかと思います。
そこで、このページでは、不動産業に関連した4資格で比較しながら、賃貸不動産経営管理士試験の難易度について、ご紹介していきたいと思います。
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賃貸不動産経営管理士試験の難易度は?
まずはじめに、賃貸不動産経営管理士試験の難易度について、ザックリと概要をご紹介します。
国家資格化に伴い難化した
賃貸不動産経営管理士試験は、2021年度の国家資格化に伴い、難化傾向が進んでいます。
国家資格になる前々年度(2019年度)に合格率が50%台から30%台に急落、その翌年度(2020年度)には90分40問から120分50問の試験制度に変更されるなど、国家資格に相応しい難易度・試験制度に変革されてきました。
とはいえ比較的易しい資格
ただし、難化したとはいえ、合格率は30%前後あり、偏差値は41とされていますので、国家資格としては、比較的易しい資格といえますね。
また、合格するために必要な勉強時間は100時間といわれていますので、その気になれば、かなりの短期間で合格することも可能です。
ということで、こういった賃貸不動産経営管理士試験の難易度について、以下で詳しくご紹介していきます。
- 合格率: 30%前後
- 偏差値: 41
- 勉強時間: 100時間
賃貸不動産経営管理士試験の合格率・合格点
それでは、賃貸不動産経営管理士試験の難易度を測る指標として、まずは合格率・合格点から詳しく見ていきます。
合格率の推移(ここ数年は30%前後)
賃貸不動産経営管理士試験の合格率は、2018年度までは、おおむね50%前後で推移しており、比較的易しい難易度でした。
国家資格化に伴い難化
ところが、国家資格化を見据えた2019年には、受験者数23,605人のうち、合格者数は8,698人で、合格率は36.8%にまで急激に下がりました。
さらに、国家資格となる前年の2020年度試験においては、29.8%にまで下がりました。
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合格率は30%前後で推移
そして、賃貸不動産経営管理士が国家資格となった初年度の2021年度試験は、前年とほぼ同様の31.5%、そして2022年度も27.7%という形で下げ止まりましたので、今後も30%前後で推移することが予想されます。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
平成25年 (2013年) |
3,946 | 3,386 | 85.8% |
平成26年 (2014年) |
4,188 | 3,219 | 76.9% |
平成27年 (2015年) |
4,908 | 2,679 | 54.6% |
平成28年 (2016年) |
13,149 | 7,350 | 55.9% |
平成29年 (2017年) |
16,624 | 8,033 | 48.3% |
平成30年 (2018年) |
18,488 | 9,379 | 50.7% |
令和1年 (2019年) |
23,605 | 8,698 | 36.8% |
令和2年 (2020年) |
27,338 | 8,146 | 29.8% |
令和3年 (2021年) |
32,459 | 10,240 | 31.5% |
令和4年 (2022年) |
31,687 | 8,774 | 27.7% |
宅建・管理業務主任者・マンション管理士よりも易しい
賃貸不動産経営管理士試験の合格率は、不動産業関連の他の資格試験と比べると、以下のような位置づけになります。
資格名 | 合格率 |
---|---|
マンション管理士 | 約 9% |
宅建士 | 約 15% |
管理業務主任者 | 約 20% |
賃貸不動産経営管理士 | 約 30% |
マンション管理士が最も難易度が高い
この表のとおり、不動産業関連4大資格の中では、マンション管理士の合格率が約9%と最も低く、難易度が高い資格といえますね。
次いで宅建⇒管業⇒賃管士の順
その次が宅建士の15%、続いて管理業務主任者の20%、そして、賃貸不動産経営管理士の30%という順になっており、マンション管理士や宅建士、管理業務主任者に比べると、易しくて合格しやすい資格と言えそうです。
試験問題も、記述式問題はなく、50問すべてがマークシート方式ですので、受験対策もしやすいと思います。
とはいえ10人中7人が落ちる試験
そうは言っても、実際のところ合格率30%ということは、10人受験すると、7人は落ちる試験だということになります。
つまり、半分以上の人は落ちるわけです。
ということで、不動産関連資格の中では難易度は低い(合格率は高い)とはいえ、十分な受験対策が必要と言えますね。
合格点・合格ラインは7〜8割
賃貸不動産経営管理士試験の合格点は、下表のとおり、2019年度までは40点満点中21点〜29点、2020年度〜2022年度試験においては50点満点中34点〜40点となっており幅があります。
年度 | 合格率 | 合格点 (40点満点) |
合格点の 正答率 |
平成25年 (2013年) |
85.8% | 28点 | 70% |
平成26年 (2014年) |
76.9% | 21点 | 53% |
平成27年 (2015年) |
54.6% | 25点 | 63% |
平成28年 (2016年) |
55.9% | 28点 | 70% |
平成29年 (2017年) |
48.3% | 27点 | 68% |
平成30年 (2018年) |
50.7% | 29点 | 73% |
令和1年 (2019年) |
36.8% | 29点 | 73% |
年度 | 合格率 | 合格点 (50点満点) |
合格点の 正答率 |
令和2年 (2020年) |
29.8% | 34点 | 68% |
令和3年 (2021年) |
31.5% | 40点 | 80% |
令和4年 (2022年) |
27.7% | 34点 | 68% |
相対評価方式を採用
このように、合格点に幅があるのは、賃貸不動産経営試験は、何点取れば合格するといった絶対評価方式ではなく、相対評価方式が採用されているからです。
合否の判定基準は公表されていませんが、おおむね維持すべき合格率になるように合格ラインが決められていると考えられます。
30%前後の合格率になるよう合格点が調整されている
2018年までは、50%程度が維持すべき合格率だったと考えられますし、2019年度は、国家資格に移行した後の目指すべき合格率への過渡期として、その中間的な合格率で、2020年度以降の30%程度というのが、国家資格として維持すべき合格率になっているのではないかと想像できます。
多くの国家試験は、このような相対評価方式が採用されていますので、賃貸不動産経営管理士試験が特別なわけではありません。
ちなみに、絶対評価方式が採用されている試験として有名なのは、行政書士試験ですね。
7〜8割の正答率が合格ライン
いずれにしても、賃貸不動産経営管理士試験では、おおむね7〜8割の正答率が合格ラインになってきますので、そのあたりを目処に想定しておけばよいかと思います。
- 合格率: 30%前後
- 合格点: 7〜8割 (50点満点中34〜40点)
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- 予想合格点はこちら⇒賃貸不動産経営管理士試験の合格点予想・合格ライン
賃貸不動産経営管理士の偏差値は?
賃貸不動産経営管理士の難易度を測る指標として、偏差値を利用するという方法もあります。
偏差値は「41」の簡単レベル
偏差値というのは、平均点を50とし、受験者全体の得点分布に基づき算出される数値ですので、受験者の属性がまったく異なる資格試験を跨いで、各資格試験の偏差値を算出するというのは、本来は不可能です。
しかし、資格難易度ランキングというサイトにおいて、公表されている合格率や合格点などの情報や傾向に基づき、推定の偏差値を独自に算出するといったことがなされています。
ここに掲載されているデータによると、賃貸不動産経営管理士の偏差値は「41」とされています。
偏差値40台の資格は「簡単」レベルの難易度ですが、おそらくこれは、合格率が50%以上あった時点の偏差値ではないかと思われます。
ですので、国家資格となり、合格率も30%程度になってくれば、当然この偏差値はもっと上がってくるものと考えられます。
不動産系・法律系資格の偏差値ランキング
この偏差値を、有名どころの不動産系・法律系資格と比較してみたいと思います。
資格難易度ランキングに掲載されている偏差値によると、以下のようになっています。
順位 | 資格名 | 偏差値 |
---|---|---|
1 | 司法書士 | 72 |
2 | 社労士 | 65 |
3 | 行政書士 | 65 |
4 | 土地家屋調査士 | 64 |
5 | マンション管理士 | 61 |
6 | 宅建 | 57 |
7 | 管理業務主任者 | 55 |
8 | 賃貸不動産経営管理士 | 41 |
出典:資格難易度ランキング
このように、合格率から見た難易度の順序と同様に、マンション管理士が最も偏差値が高く、次いで宅建士、管理業務主任者、賃貸不動産経営管理士の順になっていますね。
今後、賃貸不動産経営管理士の偏差値も上がってくることが見込まれますが、管理業務主任者よりは低い偏差値になると予想されますので、今後もこの順序は維持されるものと思われます。
つまり、不動産関連4大資格の中では、一番合格しやすい資格ということになりますね。
また、有名な不動産系・法律系資格の中でも、一番低い難易度ということになります。
- 偏差値: 「41」の簡単レベル
- 不動産業4大資格の中で、一番易しい
賃貸不動産経営管理士の合格に必要な勉強時間は?
次は、賃貸不動産経営管理士試験の難易度を測る指標として、「合格するために必要な勉強時間」から比較していきたいと思います。
100時間の勉強が必要
まずは、賃貸不動産経営管理士試験についてですが、賃貸不動産経営管理士試験に合格するためには、一般的に100時間の勉強時間が必要と言われています。
勉強時間を宅建・管業・マン管と比較
では次は、不動産系資格で、合格に必要な勉強時間を比較してみたいと思います。
賃貸不動産経営管理士試験を含め、資格試験の難易度は、試験に合格するために必要な勉強時間と、ある程度の相関関係があります。
資格名 | 合格率 | 必要な勉強時間 |
マンション管理士 | 約 9% | 500時間 |
宅建士 | 約 15% | 300時間 |
管理業務主任者 | 約 20% | 300時間 |
賃貸不動産経営管理士 | 約 30% | 100時間 |
このように、難易度の高い(合格率の低い)資格試験ほど、合格に必要な勉強時間も多くなっていますね。
社会人が働きながら勉強することを考えると、100時間の勉強時間を確保するためには、1日に1時間ぐらいはすぐに確保できるとして、2時間もそこそこ頑張ればなんとかなるかと思いますが、3時間というのは、私自身の経験上、かなり無理をしないと確保できないかと思います。
そこで、1日に2時間を確保するとすれば、100時間÷2時間=50日⇒1ヶ月半という計算になります。ただし、毎日確実に2時間を確保するというのは現実的ではありませんので、2ヶ月ぐらいを想定しておくのがよいのではないでしょうか。
ですので、賃貸不動産経営管理士の試験日が11月の第3日曜日ですので、その2ヶ月前、つまり9月には遅くとも勉強を開始することをおすすめします。
- 勉強時間: 100時間
- 勉強期間: 1ヶ月半〜2ヶ月(1日2時間勉強する場合)
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宅建・管理業務主任者の合格者には有利
不動産業の関連資格に関しては、宅建の資格をまず最初に取得される方も多いかと思います。
試験範囲に重複がある
賃貸不動産経営管理士試験の試験範囲の中で、民法・借地借家法・宅建業法・税などが、宅建試験と重複しています。
宅建よりも、管理業務主任者試験の方が、設備系の科目が入ってきますので、さらに重複する部分は増えてきます。
初学者の半分(50時間)の勉強時間で合格できる
私の経験上、宅建や管理業務主任者の知識がある方にとっては、賃貸不動産経営管理士試験は、初学者の半分ぐらい(50時間)の勉強時間があれば、合格できるのではないかと思います。
ですので、私の場合は、約30時間の勉強時間(1日30分で約2ヶ月)で、賃貸不動産経営管理士試験に合格することができました。
私は、宅建の受験勉強については、一般的に必要と言われている勉強時間と同様に約300時間の勉強をしましたので、私が特別に頭がいいとかいうわけではありません。
ですので、合格率が30%になったとしても、宅建や管理業務主任者の合格者にとっては、もっと易しいイメージを持っても大丈夫だと思います。
- 民法・借地借家法・宅建業法・税などが、宅建試験と重複
- さらに、設備系の科目が管理業務主任者試験と重複
- 宅建・管理業務主任者の合格者なら半分の勉強時間(50時間)でOK
講習を受ければ5問免除でさらに有利に
賃貸不動産経営管理士試験には、「賃貸不動産経営管理士講習」を受講すれば、5問免除(問46〜50)を受けることができる特典があります。
この賃貸不動産経営管理士講習というのは、賃貸管理業務に必要な専門知識の習得と実務能力を高めるためのもので、「事前学習」と「講習」とで構成されています。
- 事前学習・・・ 2週間程度かけて、公式テキストを使って自己学習を行う。
- 講習・・・ 丸1日(9:00〜17:30)、公式テキストを使って会場で講習を受け、確認テストを受ける。
夏頃(7月〜9月)に、全国47都道府県で実施されますので、2万円前後(実施機関により料金は異なります)の受講料はかかりますが、この講習を受けておけば、当日の試験はかなり有利になるのは間違いありませんね。
賃貸不動産経営管理士は独学でも合格可能!
私は、賃貸不動産経営管理士試験には通信講座を使って勉強しました。しかしそれは、「独学」の勉強方法自体を否定したわけではなく、私自身、仕事もプライベートも忙しくなり、机に向かって勉強する時間を確保することができなくなったからです。このため、スキマ時間を寄せ集めて、スマホだけで勉強できる「スタディング」という通信講座を選びました。
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しかし、独学であれ通信講座であれ、勉強する手段が異なるだけで、勉強する内容に違いはありません。
独学におすすめの勉強法
賃貸不動産経営管理士試験は不動産系の他の資格に比べても難易度は低く、合格しやすい試験ですので、独学であってもテキスト1冊をしっかりと読み、問題集(過去問)を複数回繰り返すだけで、短期合格が十分に可能な資格です。
おすすめの勉強方法については賃貸不動産経営管理士の独学におすすめの勉強方法のページ、おすすめのテキストや問題集については賃貸不動産経営管理士の独学におすすめのテキスト・過去問のページでご紹介していますので、そちらを参考にしてください。
独学が不安な方は通信講座もおすすめ
なお、独学が不安な方や、短期合格を目指したい方には、通信講座もおすすめです。
下記の記事では、おすすめ通信講座を徹底的に比較してランキング形式でご紹介しています。初心者向け講座のほか、費用の安い講座、合格率の高い講座、サポートの充実した講座など目的別のおすすめもご紹介していますので、参考にしてください。
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- 賃貸不動産経営管理士の通信講座おすすめランキング
最安値は14,960円!
賃貸不動産経営管理士の試験制度(試験日・試験内容)
次は、賃貸不動産経営管理士試験の試験日や受験資格、試験内容など、試験制度についてご紹介します。
試験日は年に1回、11月の第3日曜日
賃貸不動産経営管理士試験は、毎年1回、11月の第3日曜日に実施されています。
2023年度(令和5年度)の試験日程は、以下のとおりです。
願書配付 |
令和5年8月1日(火)〜9月21日(木)12:00まで |
申し込み期間 |
令和5年8月1日(火)〜9月28日(木) |
試験日時 |
令和5年11月19日(日) |
合格発表 |
令和5年12月26日(火) (予定) |
受験料 |
12,000円 |
受験資格 |
年齢、性別、学歴などの制約なく、誰でも受験可能 |
受験資格はなく誰でも受験できる
賃貸不動産経営管理士試験には、年齢、性別、学歴などの制約はありませんので、どなたでも受験できます。
試験問題はマークシート50問
賃貸不動産経営管理士試験は、四肢択一(マークシート方式)で、下記の科目について、50問が出題される筆記試験です。
- 管理受託契約に関する事項
- 管理業務として行う賃貸住宅の維持保全に関する事項
- 家賃、敷金、共益費その他の金銭の管理に関する事項
- 賃貸住宅の賃貸借に関する事項
- 法に関する事項
- 上記に掲げるもののほか、管理業務その他の賃貸住宅の管理の実務に関する事項
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賃貸不動産経営管理士の難易度まとめ
以上、賃貸不動産経営管理士の難易度について見てきました。
賃貸不動産経営管理士は、宅建や管理業務主任者、マンション管理士に比べると、難易度は低く、合格しやすい資格だということはご理解していただけたかと思います。
最後に、ここまでの内容をまとめると、以下のようになります。
- 合格率は約30%(マンション管理士、宅建、管理業務主任者より難易度は低い)
- 合格点(合格ライン)は約7〜8割の正答が必要
- 偏差値は41で資格試験の中では「簡単レベル」に位置付けられる※ただし、国家資格となり偏差値は上がってくる。
- 合格するには100時間の勉強時間が必要
- ただし、宅建・管理業務主任者の合格者は半分ぐらいの勉強時間で大丈夫
- 講習を受ければ5問免除で有利に
- 独学でも合格可能
賃貸不動産経営管理士試験は、比較的、難易度の低い試験ではありますが、10人中7人は落ちる試験ですので、油断は禁物です。
しかし、独学で挑戦するにしても、講座を受講するにしても、しっかりと計画を立てて、とにかく最後までやり切ることができれば、誰でも合格することができる資格です。
ぜひ、賃貸不動産経営管理士試験の合格を目指して、頑張ってください!