行政書士とは?仕事内容や独占業務を解説!
更新日:2024年9月24日
行政書士という名前はよく聞くけれど、どんな仕事をする資格なのかよくわからない、、という方も多いのではないでしょうか。
そこで、このページでは、行政書士の仕事内容や独占業務について紹介したいと思いますので、参考にしてください。
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行政書士とは?
まず、行政書士とはどんな資格なのか、概要から紹介していきます。
- 官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類の作成・提出手続代理・相談業務を行う資格
- 行政書士は、行政手続の専門家であり、許認可のプロフェッショナル
官公署に提出する書類などの作成等をする資格
行政書士とは、官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類の作成や提出手続の代理・相談を行う資格です。
ただし、官公署と言っても、裁判所・法務局は弁護士・司法書士、税務申告書類は税理士、社会保険・労務は社労士のそれぞれ独占業務ですので、このような他士業の独占業務を除いたものが、行政書士の業務範囲となります。
このような業務の中で、行政書士の最も代表的・中心的な業務は、官公署への許認可の申請業務です。
許認可の申請とは、例えば、建設業の許可や飲食店の営業許可、旅館業の営業許可、開発許可、農地転用許可、外国人在留許可、自動車登録申請・車庫証明などの申請業務が挙げられます。
なお、権利義務や事実証明に関する書類の作成というのは、例えば、契約書や議事録の作成などが該当します。
「行政手続」の専門家であり、許認可のプロフェッショナル
行政書士の資格は、ドラマ化もされた漫画「カバチタレ」で一躍脚光を浴び、人気資格として広く知れ渡りましたね。
とはいえ、マンガで描かれている行政書士は、あくまでもフィクションですから、実際に行政書士の資格者ができる業務とは、かけ離れていることに注意が必要です。
法律的な問題を調整したり交渉したりすることは、非弁行為(弁護士でなければできない業務)に当たりますから行政書士にはできません。
また、裁判所や法務局に提出する書類の作成は、それをサポートすることや相談に乗ることも含めて、非弁行為であり、非司行為(司法書士でなければできない業務)に当たりますので、これも行政書士にはできません。
なお、”街の法律家”という呼び名もありますが、法律家というと、法的な紛争を解決するイメージがあるため、日本弁護士会連合会から過去2度にわたり(平成18年・平成24年)、その呼称をやめるよう行政書士会に正式に申し入れがあったように、行政書士の実態を表すには、相応しくない呼称です。
行政書士は、その名のとおり「行政手続」の専門家であり、「行政法」を専門的に学習するわけですから、あくまでも行政手続を主たる業務とする「許認可のプロフェッショナル」であると認識すべきですね。
行政書士になるには?
行政書士になるためには、まず「行政書士になるための資格」を取得してから、「日本行政書士会連合会」に登録するという2段階の手続きが必要となります。
- 行政書士になるための資格を取得する
- 日本行政書士会連合会に登録する
行政書士になるための資格を取得する
”行政書士になるための資格”を取得する最も一般的な方法は、1年に1回実施される行政書士試験に合格することです。
行政書士試験に合格する以外の方法としては、国家公務員、地方公務員又は一定の独立行政法人の職員として、行政事務に20年以上(高卒以上の学歴がある場合は17年以上)従事することによっても、行政書士の資格を取得することができます。いわゆる『特認制度』と呼ばれるものですね。
また、弁護士、弁理士、公認会計士又は税理士のいずれかの国家資格を取得することによっても、行政書士の資格を得ることができます。
- 行政書士試験に合格する
- 又は、公務員等の職員として、行政事務に20年以上(高卒以上の学歴がある場合17年以上)従事する
- 又は、弁護士、弁理士、公認会計士又は税理士のいずれかの国家資格を取得する
日本行政書士会連合会に登録する
上記のいずれかの方法によって行政書士となる資格を取得した後に、各都道府県の行政書士会を経由して「日本行政書士会連合会」が備える行政書士名簿に登録することで、行政書士になり、行政書士として業務を行うことができるようになります。
また、これと同時に都道府県の行政書士会にも入会することになります。
なお、未成年者や破産者、禁錮以上の刑に処せられて3年を経過しない者など、欠格事由に該当する方は登録できません。
行政書士の仕事内容・独占業務
次は、行政書士の独占業務を含め、仕事内容についてもう少し詳しく紹介していきます。
上述のとおり、行政書士の仕事は、官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類の作成や提出手続の代理・相談を行うことです。(行政書士法第1条の2、第1条の3)
官公署というのは、各省庁、都道府県庁、市・区役所、町・村役場、警察署などの、いわゆる「お役所」のことですね。
ただし、官公署と言っても、裁判所・法務局は弁護士・司法書士、税務申告書類は税理士、社会保険・労務は社労士のそれぞれ独占業務ですので、このような他士業の独占業務を除いたものが、行政書士の業務範囲となります。
行政書士は、書類の作成を主な業務とすることから、昔は「代書屋」と呼ばれることもありましたが、現在では、法改正により業務の幅が広がってきています。
この法改正というのは、具体的には、平成14年の行政書士法の改正により、「書類提出代理業務」が付与され、平成20年の改正により、「聴聞代理業務」が付与され、さらに、平成26年の改正により、「審査請求等の書類作成、代理業務」を行うことができる「特定行政書士」の制度が創設されました。
このように、行政書士の社会的役割と業務は着実に広がっており、今、注目を浴びている国家資格のひとつと言えます。
行政書士が作成する書類や代理手続、相談業務の内容は、次のように分類されます。
- 「官公署に提出する書類」の作成、代理、相談業務
- 「権利義務に関する書類」の作成、代理、相談業務
- 「事実証明に関する書類」の作成、代理、相談業務
- その他特定業務
ただし、上述のとおり、裁判所・法務局への提出書類や、税務申告書類、社会保険・労務に関する書類など、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、行うことはできません。
行政書士の”独占業務”と”非独占業務”
行政書士の仕事は、「独占業務」と「非独占業務」とに分かれます。
独占業務というのは、つまり、行政書士しか”業として”やってはいけない業務のことですね。逆に言うと、行政書士ではない人が、この業務をすると違法になり、罰せられることになります。(行政書士法第21条)
上記に掲げた行政書士の仕事内容のうち、「書類の作成」の部分が、行政書士の独占業務とされています。(行政書士法第19条)
- 官公署に提出する書類の作成
- 権利義務に関する書類の作成
- 事実証明に関する書類の作成
では、行政書士の仕事内容について、もう少し具体的に紹介していきたいと思います。
「官公署に提出する書類」の作成、代理、相談業務
まずは、行政書士の最も代表的・中心的な仕事である「官公署に提出する書類」の作成、代理、相談業務からご紹介します。
官公署というのは、各省庁、都道府県庁、市・区役所、町・村役場、警察署などの、いわゆる「お役所」のことです。
行政書士というからには、「行政」に対する書類の作成こそが、その本来業務であり、この業務こそが、行政書士が行政書士たる所以ですよね。
こういった官公署に提出する書類というのは、ほとんどは許認可等に関するもので、その数は1万種類を超えると言われています。
例えば、営業の許認可申請(建設業の許可や飲食店の営業許可など)、開発許可・農地転用許可申請、外国人在留許可申請、自動車登録申請・車庫証明、道路使用許可申請などがあります。
このような許認可を得るための申請は、提出書類や添付書類がとても複雑で、法律的な専門知識を要するものが多いため、これらの手続に関する書類を作成することや、手続を代理すること、そして、これらに関する相談業務(各種手続について依頼者から相談を受け、それに対して必要な手続を提案するなどのコンサルタント業務)を、行政書士の業務として行うことになります。
また、このような許認可等に関する聴聞や弁明の機会の付与の手続(不利益処分を受ける際の意見陳述のための手続)を代理することも行政書士の仕事です。
「権利義務に関する書類」の作成、代理、相談業務
権利義務に関する書類というのは、権利の発生、存続、変更、消滅の効果を生じさせることを目的とする意思表示に関する書類のことです。
具体的には、遺産分割協議書、遺言書、各種契約書(贈与、売買、消費貸借、使用貸借、賃貸借、請負、委任、和解)、念書、示談書、協議書、内容証明、嘆願書、請願書、陳情書、上申書、始末書、定款等があります。
こういった各種の書類を作成することや、代理すること、そして、これらに関する相談業務(コンサルタント)が行政書士の仕事となります。
ただし、これらの業務は、非弁行為や非司行為など、他士業の独占業務に触れないように、細心の注意が必要です。
「事実証明に関する書類」の作成、代理、相談業務
主なものとして、実地調査に基づく各種図面類(位置図、案内図、現況測量図等)、各種議事録、会計帳簿、貸借対照表、損益計算書等の財務諸表、申述書等があります。
こういった書類についても、他士業の独占業務に触れないように、細心の注意が必要です。
その他特定業務
2014年の行政書士法改正により、許認可等に関する審査請求、再審査請求など行政庁に対する不服申立ての手続について代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成する業務が、新たに加わりました。
この業務については、日本行政書士連合会会則に定める研修を修了した行政書士(特定行政書士)に限り、行うことができる業務とされています。
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行政書士と司法書士の仕事内容の違い
行政書士と司法書士は、いずれも「書士」という名前がついているため混同されることがよくありますが、その違いについて簡単に説明しておきたいと思います。
行政書士の仕事
行政書士の仕事は、上記のとおり、官公署に提出する許認可等の書類の作成やその手続の代理、権利義務又は事実証明に関する書類の作成、そして、これらの書類を作成する上での相談業務です。
司法書士の仕事
司法書士の仕事は、登記又は供託に関する手続の代理、裁判所への訴状や告訴状の作成、簡易裁判所での代理人業務などです。
司法書士と行政書士の仕事の違い
これらの違いをひとことで言うと、作成する書類の提出先の違いです。
行政書士は、官公署(国の機関や都道府県、市町村など。法務局・裁判所を除く。)に提出しますが、司法書士は、法務局や裁判所に提出します。
行政書士が官公署に提出する書類の代表的なものは、許認可等の申請書等です。
司法書士が法務局に提出する書類は、登記申請書や供託書など、裁判所に提出する書類は訴状などということになります。
司法書士と行政書士で重複する仕事
ただし、現実には、重複してくる業務もあります。例えば、「相続手続」に関する業務は、行政書士も司法書士も取り扱う業務です。
遺言書の作成や、相続人の調査、遺産分割協議書の作成などは、行政書士も司法書士もいずれも行うことができる業務ですが、いざ相続登記をしようとすると、その登記申請は司法書士にしかできない業務ですので、ここで違いが出てきます。
また、会社の設立に関しても似たような話が出てきます。会社を設立するための定款の作成は、行政書士も司法書士もいずれも行うことができる業務ですが、いざ設立登記をしようとすると、その登記申請は司法書士にしかできません。
というような具合ですので、そもそも行政書士の仕事は、相続や会社設立ではなく、その本来的・中心的業務である「許認可」を中心に考えるべきですね。
非司行為に注意
稀に、司法書士の独占業務が「登記申請の代理」だけで、「登記申請書の作成」は独占業務ではないと勘違いし、行政書士が相続登記(又は設立登記)の申請書を作成して本人に申請させるという事例があるようですが、これは明らかな違法行為です。
これを、”非司行為”といいます。つまり、司法書士ではない者が、司法書士の業務を行うことですね。
無報酬であっても、相談を受けるだけであっても、非司行為として罰せられる
しかも、非司行為は、たとえ無報酬で行ったとしても同様です。
法務局に提出する書類の作成は、その相談を受けることも含めて司法書士の独占業務であり、司法書士でない者がこの業務を行った場合は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられますので、注意が必要です。(司法書士法第3条第1項第2号、第73条第1項、第78条第1項)
行政書士の年収
行政書士の平均的な年収は、およそ500万円ぐらいと言われています。
一方、司法書士の平均的な年収は、およそ500万円~600万円ぐらいと言われていますので、そう大きな差はないようです。