更新日:2023年9月11日
行政書士は、「街の法律家」として、社会的役割と業務の幅を拡大してきており、今、注目されている国家資格のひとつです。
この行政書士試験に興味をお持ちの方も多いかと思いますが、そもそも行政書士試験って難しいんじゃないの?そう簡単に合格できるものなの?と不安に感じてらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、このページでは、他の法律系資格との比較も交えながら、行政書士試験の難易度について、合格率・偏差値・勉強時間・合格点に基づいて、ご紹介していきたいと思います。
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行政書士試験の難易度は?
行政書士試験の難易度は、合格率が10%前後で、偏差値は65とされており、難関資格に位置付けられます。
また、合格するために必要な勉強時間は500〜800時間といわれていますので、ちょっとした思い付きで合格できるような簡単な試験ではありません。本気で勉強しないと合格できません。
士業や有名資格で比較すると、弁護士や公認会計士、司法書士、税理士といった超難関資格と比べれば、断然易しいですが、宅建士や簿記2級、FP2級と比べた場合は、圧倒的に行政書士の方が難しい資格です。
中小企業診断士・社労士・土地家屋調査士といった資格が、行政書士に近い難易度になってきます。
ということで、行政書士の難易度について、おおまかなイメージを持っていただけたかと思いますので、以下では、具体的な数値を見ながら、詳しくご紹介していきます。
- 合格率10%前後、偏差値65の難関資格
- 500〜800時間の勉強が必要で、本気で勉強しないと合格できない
- 中小企業診断士・社労士・土地家屋調査士が、近い難易度
行政書士試験の合格率
このグラフは、行政書士試験の過去10年間の合格率の推移です。
一番低いときで8.3%、一番高いときで15.7%とバラつきはありますが、おおむね10%前後で推移していることがわかりますね。
合格率10%の難関資格
一般的に合格率10%といえば、「難関資格」の部類に入ってくるかと思いますので、行政書士試験は難関資格です。
下の表は、過去10年の受験者数と合格者数、そして合格率を示した表です。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
平成24年度 (2012) |
59,948 | 5,508 | 9.2% |
平成25年度 (2013) |
55,436 | 5,597 | 10.1% |
平成26年度 (2014) |
48,869 | 4,043 | 8.3% |
平成27年度 (2015) |
44,366 | 5,820 | 13.1% |
平成28年度 (2016) |
41,053 | 4,084 | 10.0% |
平成29年度 (2017) |
40,449 | 6,360 | 15.7% |
平成30年度 (2018) |
39,105 | 4,968 | 12.7% |
令和元年度 (2019) |
39,821 | 4,571 | 11.5% |
令和2年度 (2020) |
41,681 | 4,470 | 10.7% |
令和3年度 (2021) |
47,870 | 5,353 | 11.2% |
R4 (2022) |
47,850 | 5,802 | 12.1% |
直近の2022年実施分で見ると、受験者数 47,850人のうち5,802人が合格しており、合格率は12.1%となっています。
合格者が5,000人と聞くと、かなり多くの人が合格するんだなぁと感じるかもしれませんが、約10%の合格率ですので、約50,000人が受験しているわけですから、45,000人が落ちていることになります。
そう考えれば、受験者のほとんどが落ちる難関試験だというのが実感できますよね。
司法書士・社労士・宅建士と合格率を比較
では、行政書士試験の合格率を、他の有名な法律系資格と比較してみたいと思います。
資格名 | 合格率 |
---|---|
司法書士 | 約 4% |
社労士 | 約 6% |
行政書士 | 約10% |
宅建士 | 約15% |
このように、司法書士は4%しか合格率がなく、明らかに超難関資格ですし、社会保険労務士も6%という難関です。
一方、行政書士は、10%ほどの合格率があり、超人気資格の宅建士の15%より、やや難しいぐらいの位置づけです。
ですので、行政書士は、難関資格ではありますが、法律系の国家資格で比較した場合は、中くらいの標準的な難易度と言えそうですね。
ただし、実際のところ、10%という合格率自体は、10人受験すると、9人は落ちる試験だということを忘れてはいけません。
大抵の人は落ちる試験ですから、法律系国家資格の中では「中くらいの標準的な難易度」とはいえ、十分な受験対策が必要ですね。
行政書士の偏差値は?
では次は、行政書士試験の偏差値について、見ていきたいと思います。
偏差値65の難関資格
偏差値というのは、平均点を50とし、受験者全体の得点分布に基づき算出される数値ですので、受験者の属性がまったく異なる資格試験を跨いで、各資格試験の偏差値を算出するというのは、本来は不可能です。
しかし、資格難易度ランキングというサイトにおいて、公表されている合格率や合格点などの情報や傾向に基づき、仮の偏差値を独自に算出するという試みがなされています。
この数値によると、行政書士試験の偏差値は65とされており、偏差値60以上は「難関資格」とされています。
士業・有名資格の偏差値ランキング
では、行政書士試験の偏差値を、士業や有名資格と比較してみたいと思います。
資格名 | 偏差値 |
---|---|
公認会計士 | 75 |
弁護士 | 74 |
司法書士 | 72 |
税理士 | 68 |
中小企業診断士 | 66 |
社労士 | 65 |
行政書士 | 65 |
土地家屋調査士 | 64 |
マンション管理士 | 61 |
宅建士 | 57 |
簿記2級 | 53 |
FP2級 | 48 |
中小企業診断士・社労士・土地家屋調査士と同等の難易度
このランキング表を見ると、偏差値70以上の超難関資格(公認会計士、弁護士、司法書士)は別格ですね。
そして、中小企業診断士や社労士、土地家屋調査士とほぼ同等の難易度というのがわかります。
また、超人気資格の宅建士や簿記2級、FP2級と比べた場合は、圧倒的に行政書士の方が難しいですし、マンション管理士よりもやや難しいというのもわかります。
ですので、この表の中で、「士業」のくくりでいえば、行政書士の偏差値65というのは、宅建士の57から公認会計士の75の、ちょうど中間ぐらいの難易度と言えそうですね。
行政書士の合格に必要な勉強時間は?
では、実際に行政書士試験に合格するためには、どれぐらいの勉強時間が必要なのでしょうか。
初心者に必要な勉強時間は500〜800時間
一般的に、初心者が行政書士試験に合格するためには、500〜800時間の勉強時間が必要と言われています。
もちろん、予備知識がある方や、宅建など他資格の学習経験のある方なら、もっと短時間での合格も可能です。
私の場合は、先に宅建に合格していましたので、一般的に必要とされる半分の勉強時間(約240時間)で合格することができました。
マンション管理士・宅建士よりも勉強時間が多い
では、この勉強時間についても、上記の偏差値と同様に、士業・有名資格と比較してみたいと思います。
資格名 | 初心者に必要な勉強時間 |
---|---|
弁護士 | 6,000時間 |
公認会計士 | 3,000時間 |
司法書士 | 3,000時間 |
税理士 | 3,000時間 |
社労士 | 1,000時間 |
中小企業診断士 | 1,000時間 |
土地家屋調査士 | 1,000時間 |
行政書士 | 500〜800時間 |
マンション管理士 | 500時間 |
宅建士 | 300時間 |
簿記2級 | 200〜300時間 |
FP2級 | 150〜300時間 |
この表を見ると、弁護士の6,000時間から税理士の3,000時間までは、まるで別格というのがわかります。
そして、社労士や中小企業診断士、土地家屋調査士よりも、やや少ない勉強時間になっていますね。
そして、マンション管理士・宅建士よりも、多くの勉強時間が必要になります。
一発合格者は多い
社労士試験は、合格者の平均受験回数は4回程度と言われています。
一方、行政書士の受験回数は2回前後が平均とされていますので、一発合格者もかなり多く存在することになります。
一発合格を目指して社会人が働きながら勉強することを考えると、500時間の勉強時間を確保するためには、1日に1時間ぐらいはすぐに確保できるとして、2時間もそこそこ頑張ればなんとかなるかと思いますが、3時間というのは、私自身の経験上、かなり無理をしないと確保できないかと思います。
そこで、1日に2時間を確保するとすれば、500時間÷2時間=250日⇒8ヶ月強という計算になります。
ですので、半年〜1年程度というのが、必要な勉強期間になってくるのではないでしょうか。
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行政書士の難易度が高い理由
上記で見てきたように、行政書士試験は、合格率10%の難関資格です。10人受験すれば9人が落ちる試験です。
では、なぜこれほどに合格率が低く、難易度が高いのでしょうか。その理由として、次のようなことが考えられます。
- 試験範囲が広く、足切り点が設けられている
- 出題形式が多様
理由@:試験範囲が広く、足切り点が設けられている
まず、難易度が高い理由として考えられるのは、試験範囲が広く、足切り点が設けられているという点です。
合格点について詳しくは後述しますが、行政書士試験は、法令科目として、
- 憲法
- 行政法
- 民法
- 商法(会社法)
- 基礎法学
があり、一般知識科目として、
- 政治・経済・社会
- 情報通信・個人情報保護
- 文章理解
などがあります。
このように、法律系資格でありながら、法令系科目だけでなく、「一般知識等」という科目まであるということです。
そして、法令科目と一般知識のそれぞれに足切り点が設けられていますので、いくら法令科目で満点を取ったとしても、一般知識で足切り点を超えられなければ合格することができない、ということになります。
ですので、行政書士試験は、試験範囲が広く、その広い範囲の知識を確実に一定レベル以上習得する必要があることになります。
このため、行政書士試験は、難しいということに繋がってくるわけです。
理由A:出題形式が多様
次に、行政書士の難易度が高い理由として考えられるのは、択一式だけでなく、記述式や多肢選択式といった多様な形式で出題されるという点です。
一般的な資格試験では、択一式のマークシート方式のみ、というパターンが多いかと思いますが、行政書士試験では、択一式だけでなく、多肢選択式と記述式の出題もあります。
確かに、五肢択一式のマークシートが出題の中心にはなりますが(全体60問のうち54問)、多肢選択式が3問、記述式が3問出題されます。
多肢選択式というのは、問題文が穴埋めで出題され、「1〜20の選択肢から空欄ア〜エに当てはまる語句を選択せよ」といった出題です。
そして、記述式というのは、「設問に対する回答を40字程度で記述せよ」といった出題です。
このように、多様な形式で出題されますので、単純に正誤が判断できさえすればいいような択一対策をするだけでなく、別途、多肢選択式の問題を解くための訓練をしたり、記述式対策のために、自分で文章を書く訓練をしたりする必要があります。
このため、しっかりとした受験対策ができなかった場合は、なかなか合格点を超えることができず、合格できないということになってきます。
行政書士試験の合格点
では次は、行政書士試験に合格する基準について確認しておきたいと思います。
絶対評価が採用されている
一般に、国家試験では「相対評価」で合否が決まる試験が多く、あらかじめ何%又は何人を合格させるか決められているケースが多くなっています。
ところが、行政書士試験では、「絶対評価」が採用されており、何点以上正解すれば合格、という合否の決め方になっています。このため、毎年の合格率に変動が生じることにもなっています。
行政書士試験は、下表のように、試験科目と出題形式に応じて配点が決められています。
試験科目 | 出題形式 | 出題数 | 満点 | 小計 | 合計 |
法令等 | 5肢択一式 (4点/問) |
40問 | 160点 | 244点 | 300点 |
多肢選択式 (8点/問) |
3問 | 24点 | |||
記述式 (20点/問) |
3問 | 60点 | |||
一般知識等 | 5肢択一式 (4点/問) |
14問 | 56点 | 56点 |
合格点は6割の正解
合格点は、「法令等」が50%以上、かつ、「一般知識等」が40%以上、かつ、全体の得点が60%以上(=180点以上)とされています。
つまり、合計点で60%以上が合格ラインですが、ただし、足切りが設けられており、法令等で50%と一般知識等で40%は得点しておかなければならないということになります。
なお、2006年度試験以降、合格点については、試験問題の難易度を評価し、補正的措置が加えられることがあるとされています。(実際に、この補正措置が加えられ、合格点が引き下げられたのは、2014年度試験のみです。)
いずれにしても、行政書士試験では、「6割」を正解できれば合格できるということです。(ただし、一般知識の足切り4割に注意)
そう考えると、なんとなく合格できそうな気がしてきますよね!ちなみに、宅建試験では、7割程度が合格ラインになってきますので、それと比べても、もっと間違えて大丈夫なわけです。
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- 解答速報はこちら⇒行政書士の解答速報まとめ
行政書士は独学でも合格できる?
では、難関試験である行政書士試験に合格するためには、どうすればいいのでしょうか。
独学でも合格できるのでしょうか。それとも、通信講座や予備校を利用しないといけないのでしょうか。
独学でも合格可能!
私自身は、行政書士試験には独学の勉強で合格することができました。
今の時代、ネットで検索すればすぐにわかりますが、独学で合格している方は数多くいらっしゃいます。
行政書士試験は、独学であっても、テキスト1冊をしっかりと読み、問題集(過去問)を複数回繰り返すだけで、十分に合格可能な資格です。
独学の勉強法のポイントは、以下のとおりです。
- テキスト・問題集を購入する(最低限1冊ずつあればOK)
- テキストを通読し、全体像を把握する。
- 章ごとにテキストを読み、そこに対応する問題集を解く。
- 問題集のみを解いていく(最低でも3回は解く)。
- 模試を受験する(又は予想問題集を解く)。
行政書士試験に独学で合格するための勉強法については、行政書士は独学で合格できる!おすすめ勉強法のページでご紹介していますので、そちらをご参照ください。
また、独学におすすめのテキストについては、行政書士の独学におすすめのテキスト・参考書のページでご紹介していますので、そちらを参考にしてください。
独学が不安な方は通信講座を受講すれば安心
ただし、自分でテキストを読んで勉強するのが苦手な方もいらっしゃるかと思います。
テキストを読んでもよく理解できない、眠くなってくる、といった方は、プロ講師の講義が受講できる通信講座(通信教育)を利用すれば、安心ですね。
行政書士は人気資格ですので、各社から様々な講座が提供されています。行政書士おすすめ通信講座ランキングのページでご紹介していますので、そちらを参考にしてみてください。
行政書士の試験制度(試験日・受験資格・試験内容)
次は、 行政書士試験の試験日や受験資格、試験内容など、試験制度についてご紹介します。
試験日は年に1回、11月の第2日曜日
行政書士試験は、年に1回だけ、11月の第2日曜日に実施されます。
2023年度(令和5年度)の行政書士試験の日程は、以下のとおりです。
行政書士試験は、総務大臣の指定試験機関として都道府県知事から委任を受けた「一般財団法人 行政書士試験研究センター」が実施しており、毎年1回、11月の第2日曜日に実施されます。
2023年度の試験日程は、以下のとおりです。(7月3日公示済み)
申し込み期間 | <郵送> 令和5年7月24日(月)〜8月25日(金) ※消印有効 |
<インターネット> 令和5年7月24日(月)午前9時〜8月22日(火)午後5時 ⇒一般財団法人 行政書士試験研究センター ![]() |
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試験日時 | 令和5年11月12日(日) 午後1時〜午後4時(3時間) |
合格発表 | 令和6年1月31日(水)午前9時 |
受験料 | 10,400円 ※令和3年度までは7,000円でしたが、令和4年度以降10,400円に改定されています。 |
受験資格はなく誰でも受験できる
行政書士試験には、年齢、学歴、国籍などの制約はありませんので、どなたでも受験できます。
試験問題はマークシート57問+記述式3問
行政書士試験は、法令知識と一般知識について問われる筆記試験で、マークシート(五肢択一式・多肢選択式)と記述式(40字程度)で実施されます。
出題数は、マークシートが57問で、記述式が3問の合計60問です。
科目区分 | 試験科目 | 五肢択一式 | 多肢選択式 | 記述式 |
法令科目 | 憲法、行政法、民法、商法(会社法)、基礎法学 | 40問 | 3問 | 3問 |
一般知識 | 政治・経済・社会、情報通信・個人情報保護、文章理解 | 14問 | -- | -- |
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行政書士の難易度まとめ
以上、行政書士試験の難易度について見てきました。
最後に、ここまでの内容をまとめると、以下のようになります。
- 行政書士は合格率10%、偏差値65、勉強時間500〜800時間の難関資格
- ただし、士業の中では、中くらいの標準的な難易度に位置付けられる
- 試験範囲が広く、足切り点が設けられていることや、出題形式が多様なことが、難易度が高い理由と考えられる
- 6割正解すれば合格できる (ただし、一般知識の足切り4割に注意)
- 独学でも合格可能!
このように行政書士試験は、合格率10%・偏差値65という難関資格であり、10人中9人は落ちる試験です。
しかし、士業の国家資格としては、標準的な難易度です。
そして、絶対評価が採用されており、6割正解すれば合格できる試験です。
ですので、独学で挑戦するにしても、講座を受講するにしても、500〜800時間程度の勉強をしっかりとこなせば、誰でも合格することができる資格だと思っています。
ぜひ行政書士試験の合格を目指して頑張ってください!
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