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行政書士は公務員に役立つ?元市役所職員の体験談

更新日:2026年1月13日

行政書士は公務員に役立つ?元市役所職員の体験談

 市役所や県庁に勤める地方公務員は、行政書士の資格を取っても意味がないのでしょうか?

 そんなことはありません。公務員にとって、行政書士がどのように役立つのか、また、どんなメリットがあるのかなど、実際に市役所に22年間勤めた私の体験談をもってお答えします

 ぜひ皆さんも、行政書士の資格取得にチャレンジしてください!

※ 行政書士のほか公務員に役立つおすすめ資格はこちら

【執筆者】
㈱モアライセンス代表 大西雅明

市役所に22年間勤めた元公務員。行政書士、宅建士、司法書士、土地家屋調査士などの国家資格に合格し、15年以上にわたって当サイトで情報発信している。
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執筆者紹介

公務員は行政書士になれる特認制度があるから意味がない?

 まず、公務員が行政書士の資格を取得することの意味について、私の考えを書かせていただきます。

行政事務に20年(高卒以上は17年)従事すれば行政書士になれる

 行政書士の資格は、一般的には行政書士試験に合格することで取得することができます。

 ただし、国家公務員、地方公務員又は一定の独立行政法人の職員として、行政事務に20年以上(高卒以上の学歴がある場合17年以上)従事することによっても、行政書士の資格が取得できます

 これを「特認制度」といいます。

 このため、「公務員がわざわざ行政書士試験なんて受験する必要はない」と思うかもしれません。

行政書士試験の勉強をすることに意味がある

 しかし、私が言いたいのは、公務員が”行政書士の資格を取得すること”よりも、”行政書士試験の勉強をすること”に意味があるということです。

 特に、行政書士の試験科目のうち「行政法」を勉強することに大きな意味があります

 もちろん、民法や憲法も、勉強する価値は十分にありますが、公務員にとっては、やはり行政法が直接的に様々な業務と結び付いていますので、勉強する価値がとても高いんです

 さらに、これらの法令を学ぶことによって、法的な思考能力が身につきますので、これも行政に従事する職員にとって、とても意味のあることだと思います。

 とにかく、公務員の仕事は、あらゆる業務が法令に基づいて行われるべきであり、そのベースとなるのが行政法です。

 このため、公務員の方は、職場研修などで行政法の研修を必ず受けると思いますが、受け身で学習するのと、自ら勉強するのとでは、身に付き方がまったく違います

 ですので、公務員の方には、行政書士試験の受験を是非おすすめします!

公務員の私が行政書士にチャレンジしたきっかけ

 次は、公務員の私が行政書士にチャレンジしようと思った”きっかけ”についてお話していきたいと思います。

  私が市役所に入ってから2つ目に配属されたのが、建築行政の部署「建築指導課」でした。

 そこでは、法律に基づく許認可の事務や、条例に基づく審査会の事務、そして、要綱に基づく行政指導などを行っていました。

 このように、法律、条例、要綱に基づく事務に囲まれていたわけですが、はじめの頃は特に何も考えずに、ただ決められたとおりに事務をこなすだけでした。

 しかし、法改正により新たな許認可事務が発生し、それに伴い行政手続法に基づく「標準処理期間」を定めるという事務が発生しました。

 このときに、行政手続法の存在を初めて意識することになりました。なるほど、申請を受けてから処理するまでの期間を定めることが、法律上の努力義務とされているのか、、と。

 そして次に、市が行った行政処分に対する審査請求が提起され、その事務局を担当することになりました。

 こうなってくると、行政法を意識しないわけにはいきません。行政不服審査法の出番です。

 行政不服審査法の条文を引いたり、解説書を読んだりするなかで、行政法の勉強を本気でした方がいいんじゃないか?という意識が芽生え始めました。

 そして、実務で行政不服審査法や行政手続法と悪戦苦闘しながら、独学で行政書士試験の受験勉強を始めることなりました。

 これが、私が行政書士の資格を取ろうと思ったきっかけです。

 そして、約4ヶ月間の独学で、私は行政書士試験に合格することができました。

行政書士が公務員に役立った私の体験談

 それでは、私が行政書士試験に合格した結果、行政書士の資格が公務員としてどのように役立ったのか、その具体的な実例(体験談)を、以下でお話していきたいと思います。

行政書士の知識と法的思考力で条例制定事務をこなせた

 私は行政書士試験に合格後、新規に条例を制定する事務に携わることになりました。

 条例の改正事務なら何も珍しいことはありませんが、新規に条例を制定する機会というのは、公務員にとってそうそうあるものではありません。

 ここで、行政書士試験で学んだ知識や、身につけた法的な思考能力が大いに役立ちました

 50条を超える条例と、70条を超える施行規則、それにぶら下がる要綱や要領など、すべて私が条文を書き起こしました。(もちろん、そのベースとなる方針などは上司が考えたものですが)

 大学で法学部だった方は別として、特に法律を学んだことのない職員が、果たしてこのような事務をこなすことができたでしょうか。(ちなみに私は経済学部でした)

 条文を自分で書き起こすようなことは、なかなかできませんよね。

 しかし、行政書士試験の受験勉強を通して法律に慣れ親しみ、身につけた知識と法的思考能力があったおかげで、これだけの事務をこなすことができたと思っています。

不服申立てや事務の法的な整理にやりがいを感じることができた

 建築行政の次は、税務の部署(資産税課)に異動になり、ここでも行政書士の知識が大いに役立ちました。

 資産税課は、固定資産税を賦課決定する部署です。賦課決定した後は、審査申出や異議申立てなどが提起されることがあります。

 普通の職員なら、このような事務は、できれば経験したくないと思うはずですが、私はまったく逆で、審査申出や異議申立ての事務を楽しむことができました

 法律や評価基準に照らしながら論理構成をし、弁明書を書いていきます。まさに”法律家”になったような気分を味わっていたように思います。

 また、固定資産の所有者から苦情を受け、口頭で説明していると、「文書で回答しろ!」と迫られるケースがあります。

 普通の職員なら、「いや、文書で回答するのはちょっと、、」となるところですが、私は逆でした。文書なら徹底的に理論構成し、ぐぅの音も出ないほど説明し尽くすことができるからです。

 そのほか、要綱や要領、事務処理基準なども作りまくりました事務を法的に整理することに、やりがいを感じていました

 とにかく、法律に基づいて論理構成をするのが楽しかったんです。行政書士の勉強を通じて、法律に慣れ親しみ、法律知識や法的思考を身につけた結果、公務員として、法律に基づいて事務を行うことができるようになったわけです。

説明責任が果たせるようになり法の解釈・運用能力の土台となった

 次は、市民課に配属されました。市民課では、行政書士の知識なんて関係ないんじゃないの?と思うかもしれません。

 確かに、一般的な職員は、事務マニュアルに基づき事務をこなすだけの方がほとんどかもしれません

 しかし、これらの業務も、すべて法令に基づく事務です。各種の法律があり、様々な判例や先例(国からの通達・通知など)もあります。

 それを事務処理ベースに落とし込み、マニュアルという形にしてあるだけですので、その根拠は法令にあります。

 ただし、マニュアルの中に、法的根拠のない取扱いが紛れ込んでいることも、よくある話です。

 これが問題の引き金になることがあります。「どこに書いてあるんだ!」と窓口で市民に怒鳴られます。これに対し、「はい、第〇条に書いてあります。」と答えられれば市民は納得してくれますし、説明責任を果たすことができます

 しかし、マニュアルにしか書いていなくて、どこにも根拠がないような場合は、非常に苦しいですよね。。

 ということで、私は、このように根拠なく市民に負担を求めるような手続や、根拠なく市民に不利益を与えるような事務を、極力なくさないといけない、と思うようになりました。

 そして、ここでもまた、要綱や要領の作成や条例改正などに取り組んでいきました

 また、法令に基づく事務とはいうものの、法令にすべてが書いてあるわけではありません。独自に法令の解釈が必要となる場面も多く発生します。

 このような場合に、誤った判断をしないようにするには、法的な思考能力が求められます

 法律に書いてあることをそのまま処理するのは当然の話であって、それを実務に適用したり、解釈しながら運用していくことが、行政マンとして必要とされる能力だと思います。

 こういった能力は、実務経験を積んでいくなかで培われていくものですが、そのためには土台が必要です。

 行政書士の勉強をすることで、土台となる法律知識や公務員として必要な法的思考能力を効率よく身につけることができるんです

相続人調査・相隣関係など民法の知識でスムーズに事務がこなせた

 その後は、空き家対策の部署に異動しました。最近、よく話題に上がるようになった空き家問題ですね。

 ここでは、法律や条例に基づき、指導、勧告、命令といった行政指導や行政処分をする事務がありましたので、行政手続法や行政不服審査法の知識がフル活用できました

 空き家特措法という法律がメインとなる法律でしたが、まだ新しい法律ということもあり、取扱いが定まっていない部分が多くあったため、法を解釈し、慎重に判断しながら要綱や基準を策定していきました。

 このような事務も、行政書士試験で身につけた法的思考能力がとても役立ったと思います。

 また、空き家対策の業務では、所有者の相続人調査がとても大変でした。1軒の空き家を調査するだけで、10cmのドッチファイルが戸籍で満杯になることもあります。

 このような相続権の有無の判断や、相続放棄の調査、そして相隣関係(囲繞地、根・枝の切断)の説明なども、行政書士試験で民法を学んだおかげで、スムーズに事務をこなすことができました

公務員にとって行政書士はメリットばかり!

 以上は、私が経験した各部署で、行政書士の勉強を通して身につけた行政法などの知識や法的な思考能力が役に立った事例ですが、こういった直接的に役立つ場面以外でも、行政書士の知識は、あらゆる場面で役に立つはずです。

行政法が役立つ場面

 行政法に関しては、例えば「申請の受付」は、どんな部署でもありますよね。

 申請を受け付ける場面では、審査基準を定める義務や、標準処理期間を定める努力義務があります。申請に対する応答義務があります。申請を拒否する場合は、理由の提示義務があります。

 これらはすべて、行政手続法に定められているんです。

 また、法令に根拠なく「行政指導」をすることも頻繁にありますよね。いわゆる「お願い」というやつです。これについても行政手続法に規定があります。

民法が役立つ場面

 また、行政法のほか、民法の知識もとても重要です。

 例えば、契約事務は、どこの部署でも携わるはずです。

 契約の成立や意思表示、代理権、債務不履行、危険負担、契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)など、これらすべてに民法の知識が必要になってきます。

 また、申請の受付にしても、未成年者や成年被後見人などの代理手続であったり、任意代理人からの委任状による代理申請であったり、相続人からの申請であったり、これらにも本来、民法の知識が必要なはずです。

法律知識も法的思考能力も全てが役立つ

 このように公務員の事務は、本来、民法の知識や行政法の知識が必要なものばかりですが、これら法令をきちんと学ぶことなく漫然とこなすことができてしまうのも事実です。

 しかし、しっかりと行政法や民法を学べば、これらの事務のもつ意味を認識することができ、事務の見直しに繋げることができますし、イレギュラーな事例が発生した場合でも、自身の判断で、これは法的にこうだから、こう対応すれば大丈夫、といった判断ができるようになります。

 そしてそれを上司に的確に説明することで、上司や同僚からの信頼を得ていくことに繋がります

 このように、公務員が行政書士の勉強を通じて法律知識や法的思考能力を身につけることは、とにかく”メリットばかり”だと思います!

 ですので、公務員の皆さん!一定年数働けば手にすることができる行政書士の資格ですが、是非とも、行政書士試験の勉強をし、法律知識・法的思考能力を身につけた公務員になってください!

 公務員が資格取得を考えるなら、行政書士を一番におすすめします!


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