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司法書士試験の時間配分・解答スピードアップ対策【独学講座】

更新日:2024年10月16日

司法書士試験の時間配分・解答スピードアップ

 私は、司法書士試験の午後の時間配分に失敗し、択一は午前32問・午後32問という成績を残しながら、記述が最後まで解き切れず、記述で足切りを食らうという非常に悔しい思いをした経験があります

 この結果を受け、翌年は「午後択一の解答スピードアップ」を最優先課題として取り組みました

 このページでは、午後の時間配分と解答スピードアップについて、私が取り組んだ対策(時短テクニック)をご紹介します

※ なお、最初にお断りしておきますが、劇的に早くなるようなテクニックを紹介するわけではありません。午後択一を60~70分程度で解くことを目指す内容ですので、あらかじめご了承ください。

【執筆者】
㈱モアライセンス代表 大西雅明

市役所に22年間勤めた元公務員。宅建士、行政書士、司法書士、土地家屋調査士などの国家資格に合格し、15年以上にわたって当サイトで情報発信している。
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執筆者紹介

司法書士試験の時間配分

 まず、解答スピードアップ対策について紹介する前に、司法書士試験において目標とすべき時間配分、そして私の大失敗を振り返り、それを克服した時間配分についてご紹介します。

目標とすべき時間配分

 一般的に、司法書士試験の午後択一は、1問2分で解いて70分で解き終わり、記述のために110分(不登法55分+商登法55分)を確保する必要があると言われています。

司法書士試験(午後)の目標時間配分
  • 択一式: 70分
  • 記述式(不登法): 55分
  • 記述式(商登法): 55分

 理想を言えば、択一60分、記述(不登法)60分、記述(商登法)60分です。

 午前の択一(35問120分)は、1問3分で解けば105分で、残り15分間の見直し時間まで確保できます。

 ところが、午後の部(択一35問+記述2問で180分)をそのペースで解くと、択一で105分、記述は75分しかなくなり、記述に割く時間が全く足りなくなってしまいます。

試験時間 出題数
午前(120分) 択一式35問
午後(180分) 択一式35問
記述式2問

時間配分の大失敗

 2020年度の私は、模試も受けず、年度別過去問も一度も解きませんでした

 答練は受験しましたが、いくら時間をオーバーしても、「本試験では、もっと急いで解けば大丈夫だろう。」などと考え、時間配分のことを軽視していました

 その結果、午後の択一については、1問当たり2.5分かかり、90分を費やしてしまいました。

 このため、記述を最後まで解き切ることができず、商業登記法の2回目の登記申請が丸々ほぼ空欄という恐ろしい結果になってしまいました。。

 択一は十分な知識があったにもかかわらず(午前32問・午後32問)、時間配分を軽視し、解くスピードを上げる対策を怠ったがために、このような酷い結果になってしまったのです。。

 このため、2021年度司法書士試験に向けて、「午後択一の解答スピードアップ」を最優先課題として取り組むことを、心に誓いました。

合格した年度の時間配分

 そして、私が司法書士試験に合格した年度(2021年度)における受験結果は、午前35問、午後29問、記述35点(総合140位)という成績でした。

※ 当時は記述の配点は70点でしたが、2024年度から140点に変更

 その時間配分は、午後択一に75分、記述の不登法に60分、商登法に45分という配分で、なんとか最後まで解き切ることができました

 午後択一を60~70分で解くという目標には及びませんでしたが、そこそこ許容範囲だったと思っています。

 ですので、今回の「午後択一の解答スピードアップ」という課題は達成できたと思っています。

司法書士試験の解答スピードアップ対策

 それでは、2021年度試験に向けて、私が取り組んだ時間配分・解答スピードアップ対策について、ご紹介していきたいと思います。

 この取り組みは、直前期の4月から開始しました。

早く解くテクニックの情報収集と方針の決定

 司法書士試験の午後択一式を早く解くテクニックについてネットで情報収集したところ、様々な手法が存在することがわかりました。

  • 軸肢検討のテクニック
  • 肢を読む順番に関するテクニック
  • マークシートの塗り方に関するテクニック

軸肢検討のテクニック

 こういった様々なテクニックが存在するなかで、結果的に私が採用したのは、”軸肢検討”、つまり、「確実に〇か×か判断できる肢を軸にして解答を絞り込む」という手法です。

 まぁ、司法書士試験に限らず、択一式試験における、ごく一般的なテクニックですね。

<事例解説>

例えば、ア、イ、ウ、エ、オと肢があるとします。

解答の選択肢は、

1 アウ 2 アエ 3 イウ 4 イオ 5 エオ

となっていて、「誤っている」組み合わせを選べ、という問題だとします。

この場合、アから順に肢を検討していき、アが「絶対に×」と判断できたとします。

すると、アを含む選択肢は1と2です。つまり、1か2のいずれかが正解となります。

ここで、1と2に含まれる肢は、アのほか、ウとエですから、ウとエの一騎打ちで勝負が決まります。

ということで、あとはウとエを検討するだけで答えが出せるというわけです。

もし、ウが「絶対に×」と判断できれば、答えは1に確定します。

逆に、この問題が、「正しい」組み合わせを選べ、という問題だった場合は、以下のようになります。

アが「絶対に×」と判断できた時点で、アを含む1と2を消します

次に、イも「絶対に×」と判断した場合、イを含む3と4を消します。すると、答えは5に確定します。

 実際には、ここまでスムーズに答えが出ることは滅多にありませんが、理屈としては、そういうことです。

肢を読む順番に関するテクニック

 その他にも、肢を読む順番に関するテクニックがあります。

  • アから順に読むのではなく、パッと見て判断できそうな肢から読む。
  • 文章が短い肢から読む。
  • 下から読む(オから読む)。

など、様々なテクニックが存在しています。

 この中で、「パッと見て判断できそうな肢から読む」というのが、午後択一を50分で解いてしまうような方が実践されているテクニックのようです。

 キーワードに着目して、すぐに判断できそうなキーワードを含む肢を読む、というようなテクニックですが、これは私にとっては異次元のような手法に感じ、私にはムリだな、、再現性が低いな、、と思い、採用するのは諦めました。

 文章が短い肢から読む、については、実際のところ、それほど極端に文章の長さに違いがあるようなケースは滅多にありませんので、特に気にする必要はないかなと思いました。

 下から読む、については、「〇を選べ」なら〇が下に偏っているとか、「×を選べ」なら×が下に偏っているとか、そういった可能性もありますが、実際に過去問を検証してみたところ、組み合わせ問題ですので、そこまではっきりした偏りは、なさそうでした。

マークシートの塗り方に関するテクニック

 マークシートの塗り方に関しては、1問ずつ解きながら塗りつぶすのか、後でまとめて塗りつぶすのか、の違いですね。

 「後でまとめて塗りつぶす方が早い」と言われることが多いですが、私は、どちらでも大差ないと判断しましたので、これまでどおり1問ずつ塗りつぶすことにしました

 ちなみに私は、マーク用には、0.7mmのシャープペン(一般的なシャープペンより少し太い芯)を使用しています。

早く解くテクニックの決定

 ということで、変に”策に溺れる”ようなことにならないよう「確実に判断できる肢を軸にして絞り込む」という順当な作戦のみでいくことにしました

「絶対に×」だけを使った軸肢検討を採用

 ただし、「絶対に〇」は使わずに、「絶対に×」と判断できる肢だけを使って軸肢検討をしようと考えました。

 問題文の中に、はっきりと”誤り”があると判断できる場合は、「絶対に×」なんです。

 逆に、「絶対に〇」という判断は、慎重にしないといけません。ちょっとした引っ掛けや読み飛ばしで、判断を誤るおそれがありますから。

 私は、「全肢を検討しない」ということに、かなりの不安と抵抗を感じていました。これまでは、必ず全肢を検討したうえで答えを出していましたので。

 しかし、それでは到底、目標時間内に解き終わらないのは明らかです。

 合格者の体験記を見ると、午後択一は60分で解き終わったとか、50分で解き終わった、といった声があちこちで見られます。

 そのような時間で解き終わるには、全肢検討では絶対に不可能です。このため、軸肢検討は必要不可欠な戦略といえます。

 ただし、やはり不安、、という気持ちがありましたので、「絶対に×」だけを使って絞り込む作戦で、答練・模試を受験することにしました

解答テクニックの試行錯誤と方針修正⇒「絶対に〇」も使う軸肢検討へ

 4月中旬になってから、答練を解き始めました。(答練は、1月頃から始まりますが、私は直前期になるまで解きませんでした。)

 そして、答練を受けた段階では、いずれも制限時間内に収まったため、「絶対に×」だけを使う作戦で大丈夫だと考えました。

「絶対に×」だけの絞り込みでは間に合わない

 次に、模試を受験しました。すると、どうしても75分かかってしまいます。いくら必死に急いで解いても75分です。

 結局、4回の模試いずれも75分かかってしまいました。これ以上早くなりません。

 実際のところ、択一の最後の方に来ると、もう時間が差し迫ってきて、落ち着いて問題を検討する余裕もなくなってきます。

 さらに、記述の時間がどうしても不足してしまい、最後まで書き切ることができません。

「絶対に〇」も使って絞り込みをかける必要も?

 ということは、このままの方針ではダメなんじゃないかと思い、「絶対に×」と判断できるものだけでなく、「絶対に〇」と判断できる肢も使って、解答を絞り込んでいく必要があるのではないか、と思い始めました。

 ただ、すでに模試は4回分すべて受け終わっています。

 ということで、ここで急遽、年度別過去問を購入することにしました。本試験2週間前のことです。

 LECの合格ゾーンの年度別過去問集を注文しようとしたところ、Amazonも楽天も既に在庫切れ、、万事休すか、、と思いましたが、なんとか伊藤塾の年度別過去問を、伊藤塾の直販で購入することができました。

 それと、アガルートの模試(2回分)も購入しました。

 これらを使って、午後の択一問題を、毎日30分程度ずつ(17~18問)、時間を測りながら試すことにしました

 するとやはり、「絶対に〇」と判断した肢で、判断ミスが発生しました。これは、ヤバい、、、どうしよう、、と悩みました。。

 ただ、その判断ミスを分析すると、単なる読み違いや勘違いです。用語の意味を、別の用語に読み違えるパターンや、勘違いで、できる・できないを逆に判断してしまうなどです。

 ですので、そもそも、このパターンなら「〇」であろうと「×」であろうと同じです。

 それにそもそも、「絶対に〇」と判断できるケースは、「絶対に×」と判断できるケースよりも少ないです。「〇」に関しては、それだけ慎重に判断しているということです。

 ということで、そのままの方針で続けることにしました。徐々に「絶対に〇」に関する判断ミスも減ってきました

 時間も、およそ60分~70分程度で解けるようになってきました。

使用した教材⇒ 伊藤塾の年度別過去問(5年分・午後択一のみ使用)アガルートの模試(2回分 ※当時は2回分でしたが今は1回分)

「絶対に×」と「絶対に〇」の両方を使って絞り込み

 ということで、これで午後択一の戦略は確定です!「絶対に×」と「絶対に〇」の両方を使って選択肢を絞り込む。です。

 また、多くの問題を解いていくなかで、やはり、「ひとつ選べ」や、時間がかかる問題(計算問題や1欄・2欄形式で文字がぎっしり)は、下から検討した方が効率的だと感じましたので、それも方針に加えました。

 なお、午前択一に関しては時間的に十分な余裕がありますので、より確実に「絶対に×」だけを使って絞り込む方針にしました。

【参考】商業登記の記述式で書く文字を省略する

 このページの主テーマではありませんが、解答スピードアップに関連する事項として、商業登記の記述式で、書く文字数を減らす方法について、少し触れておきます。

年月日次の者就任(次のとおり変更) ⇒ 年月日就任(変更)

 私が記述式のメイン教材として使っていた「オートマシステム商業登記法<記述式>」では、「年月日次のとおり変更」や「年月日次の者就任」などの書き方がされていました。(ケータイ司法書士も同様)

 しかし、伊藤塾の答練では「年月日変更」、「年月日就任」とだけ書かれていましたので、私は、書く文字量が少なくて済む伊藤塾方式を採用しました。

年月日就任 ⇒ 同日就任

 また、同日にAとBが重任で、CとDが就任という場合に、年月日の日付のところを、「同日」とだけ書いて済ませてもOKです。(これは、オートマもこの記載でした。)

取締役 A ⇒ 同 A

 さらに、これが一番うれしい省略法ですが、取締役など同一の役職に複数名が就任したりする場合に、役職名を「同」とだけ書いて済ませるのもOKです。

記載例

 以上の省略方法を組み合わせると、以下のようになります。

○年○月○日次の者重任
 取締役 A
 取締役 B
○年○月○日次の者就任
 取締役 C
 取締役 D

↓↓↓

○年○月○日重任
 取締役 A
 同   B
同日就任
 取締役 C
 同   D

 このようになります。これは、解答スピードを上げるために、絶対に採用すべき記載方法だと思います。

時間配分・解答スピードアップ対策の結果分析

解答スピードアップ対策の結果

 上記の方針で、2021年度司法書士試験を受験しました。その結果は、冒頭にも記載したとおり、午前は90分で解き終わり、30分の見直し。

 午後択一は75分で解き終わり、不登法記述60分商登法記述45分という結果でした。

 目標は、択一70分、不登法55分、商登法55分でしたが、まぁ許容範囲だったと思います。

時間短縮の効果検証

 では、実際に、絞り込みをかけたことでどれぐらいの時間短縮が図れたか、について検証してみたいと思います。

 午後択一35問のそれぞれについて、何肢を検討したか確認してみました。

※ 計算問題が1問(第26問)ありましたので、それは除きます。

検討した肢の数 問題数
2肢 2問
3肢 12問
4肢 11問
5肢 9問
合計 34問
検討した肢の合計数 ⇒ 130肢
(2肢×2問+3肢×12問+4肢×11問+5肢×9問)
全肢検討した場合の肢の合計数 ⇒ 170肢
(5肢×34問)

という結果でした。

 私が本試験において検討した肢の数は130肢でしたので、全肢検討の場合(170肢)に比べて、検討する肢の数が23%削減されていることになります。

 ということは、全肢検討なら90分かかるところが、軸足検討なら70分で解けるという計算です。

 私の場合、実際には75分かかりましたが、概ね作戦どおりだったと言えそうですね。

 なお、もうひとつの作戦の「ひとつ選べ」や「時間がかかる問題」の場合は、下(オ)から読む、に関しては、午後択一では「ひとつ選べ」はありませんでした。

 「時間がかかる問題」に関しては、問35で計算問題が出ましたので、一番下のオから検討し、エがややこしそうなので飛ばして、ウの検討で正解が出せました。

司法書士試験の時間配分・解答スピードアップ対策【まとめ】

 それでは最後に、司法書士試験における時間配分・解答スピードアップ対策について、まとめたいと思います。

午後択一式を早く解くテクニック
  • 軸肢検討を採用し、確実に判断できる肢(「絶対に×」又は「絶対に〇」)を使って解答を絞り込み、検討する肢の数を減らす
  • 「ひとつ選べ」や、時間がかかる問題(計算問題や1欄・2欄形式で文字がぎっしり)は、下から(オから)検討する。
  • その他、問題を解く順番や検討する順番は、順当に問1から順に解き、原則はアから順に検討する。

 以上、とりたてて目新しいスピードアップの時短テクニックはなかったかもしれませんが、最低限これだけやれば、おおむね目標とする時間配分で解けるようになるということは、ご理解いただけたかと思います。


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