公認会計士の独立開業をインタビュー取材【濱谷公認会計士(加古川市)】
このコーナーでは、士業の資格取得を目指す皆さんに役立つ情報を発信するため、士業として、どうやって独立開業までこぎつけ、軌道に乗せるのか、資格試験の受験生にとって物凄く気になる疑問について、士業の先生方に直接取材し、「士業として開業」するための情報について、お伝えしていきたいと思います。
それでは、取材の第1号は、弊社の顧問税理士としてお世話になった後、当サイトの会計資格のアドバイザーとして協力いただいている濱谷税理士・公認会計士です。
濱谷税理士は、私が入居するコワーキングオフィスの先輩会員でもあります。
私は、公務員を退職後、自宅をオフィスとして働くつもりでしたが、知人からコワーキングオフィスというものの存在を教えてもらいました。
そこでふと、濱谷税理士も打ち合わせの際にレンタルオフィスを使用されていたなぁと思い出し、尋ねてみたところ、コワーキングオフィス「エリンサーブ」を紹介していただくことになったというわけです。
そのおかげで今回、このような形で士業の先生方に取材するという企画を始めることができましたので、濱谷税理士とエリンサーブ加古川オフィスの増田マネージャーには本当に感謝しています。
濱谷税理士・公認会計士事務所 所長 濱谷 慶史(Hamatani Keishi) |
◆2011年、大和ハウスグループ子会社である不動産会社に入社。管理部にて主に決算業務・税務を担当。2014年に退職。◆同年、公認会計士登録・開業。◆同年、PwCあらた有限責任監査法人に入社。主に製造業の法定監査業務に従事。2017年退職。◆同年、業務分野を主としたコンサルティング会社に入社。◆2017年9月、税理士登録・開業。◆2019年11月、freee認定アドバイザー登録
では早速、インタビューを始めたいと思います。
インタビュアーは、当サイト管理人の大西が務めさせていただきます。(⇒サイト管理人紹介)
公認会計士の独立開業を目指したきっかけなどについて
まず、公認会計士の独立開業を目指したきっかけや、公認会計士試験の勉強方法などについて、お伺いしていきたいと思います。
公認会計士(税理士)を目指そうと思ったきっかけは何でしょうか?
公認会計士(税理士)を目指そうと思ったのは、高校1年生か2年生くらいのときだったと思います。理由は、「食いぱっぐれない」から。
当時は、「資格保持=安定」というのが世間の風潮でした。その後、その方程式が崩れるとは思いもせず…
私が資格試験に合格したのは2011年です。2008年のリーマンショックの影響等もあり、会計士試験は、合格しても大半が監査法人に就職できない、という状況になりました。監査法人も、IPO(株式公開)支援の案件が激減し仕事が減るという状況になりました。
つまり、合格したタイミングでそんな「資格保持=安定」の時代ではなくなっていたのです。
そもそも、資格というのはただの「知識は最低あるんだな」とわかるだけの証ですから、本来、持ってるだけではだめなのです。今後はその資格を利用して、自分がどうするかにかかっているのかと思います。自分次第、ということです。
どのような勉強方法で、公認会計士の受験勉強をされましたか?
公認会計士試験を受ける方は大学在学中に会計の専門学校に同時入校される方が多いのですが、私は大学卒業後に会計専門学校に入りました。大学在学中は簿記2級までは取得しておりましたが、学生生活を満喫しようという気持ちが強く、就活すらしませんでした(笑)。
卒業後、独学ではモチベーション維持や、周りの受験生の進捗の把握が大変だろうと思い、専門学校の利用を決めました。大手予備校だとどこも同じだと思うのですが、だいたい1年半~2年半の勉強期間ごとにコースがあって、試験に落ちた場合、上級コースというものが用意されています。また、通信講座も充実しています。
ちなみに、私は大原簿記専門学校で1年半コースを受講、最終論文試験に一度落ち、追加で上級コースを受講しました。
勉強時間や勉強期間はどれぐらいでしたか?
勉強時間については、1日8時間以上は勉強していたと思います。試験の直前期は12時間くらいだったと思います。
これが多いかどうかはさておき、会計士試験の勉強は、特に直前期は、予備校が作成した本番試験と同じ形式の問題集(俗にいう答練)を繰り返し解いていく方法が一般です。これ、解くだけで1科目あたり2時間や3時間かかるので、答え合わせもすると結果的に1日8時間とか余裕で過ぎてしまうわけです。
これを2年以上続けると言うと、大変に聞こえるかもしれませんが(大変ですが)、初期のインプット期間は、講義時間含めて8時間くらいです。途中息抜きに遊びにいったり、仲間と勉強サボって休憩室で話してたりっていうのは日常茶飯事でした。
独学は可能だと思いますか?
独学を勧めるか否かは賛否両論あるかと思いますが、十分可能ではあります。専門学校に通っていた身として、専門学校に通う最大のメリットはモチベーションの維持なのかなと思っています。
公認会計士・税理士では、教材は専門学校のものを利用したほうがよいかと思います。通信講座だと講義DVDも付属しており、正直通いとあまり差はないかと思います。
安く入手するなら、教材をオークションサイトでも入手するのも手です。本番の事前練習として、直前対策模試を複数の専門学校で受けるのもよいです。あとは、長期の受験生活を一人でモチベーション維持しながら続けていけるか否かにかかっているのかと思います。
勉強中、挫折しそうになったことはありますか?
沢山あります。成績が伸びないとき、試験直前の模試でE判定だったとき、不合格だったとき…。受験生には、常に「いつか受かるのだろうか?」「別の道を探したほうがよいのだろうか?」という不安や迷いがあることかと思います。
私も、試験に落ちたときは大変ショックでした。当然、仲の良い友達は合格してたりするわけです。またもう1年きつい受験生活を継続すると想像したときの絶望感。自分の場合は、もう試験に合格するしかないと自分の道を決めてましたから、悔しいですが割り切って、翌日には予備校の自習室で朝から勉強しにいきました。
周りから「ああ、不合格だったんだなあの人」なんて思われても気にしない。あまり周りは気にしないほうがいいです。勉強方法も1から変更しました。それくらいの覚悟を再度決めました。実際、自分だけでなく、翌日から机に向かってる不合格の仲間は結構いました…。
「別の道を探したほうがよいだろうか?」と考えている方、じっくり考えてください。試験合格はあくまで通過点で、そこから自分が何をしたいのかが重要ですので、将来の自分が何をしたいのか想像してください。その資格を利用してやりたいことがあったのなら、覚悟を決めてその道を突き進んでください。
勉強方法のコツはありますか?
その壱…モチベーションをあげるために「楽しく」勉強する
正直、内容が難しければ難しいほど、勉強って辛く感じるものです。もしかしたらそうでない方もいるのかもしれませんが、少なくとも自分はどちらかというと勉強全然面白くありません派でした。
例えば、自分なりの「整理ノート」を作るのがよいです。参考書にすでにまとめられてるかもしれませんが、それでもとにかく自分なりに図を作ってまとめるのです。
重要な問題だけを集めて自分なりの問題集を作成
よく、マーカーでライン引いてるときって楽しくありませんか?ライン引きすぎて意味がなくなっちゃってるかもしれませんが、勉強しようと前向きになった、という意味でそれは意味のあることなのかなと思います。受け身の勉強に楽しみを見出すのは難しいかと思います。
ただし、マーカー引くことが目的になったらダメです。あくまでモチベーション上げるために自分なりの整理図などの勉強の為のプロダクトを作成する。そこまで行くと、勉強する姿勢ができているので、後は理解することです。
その弐…理解して記憶すること
丸暗記した記憶は忘れやすく、理解して得た記憶は忘れにくいです。当たり前かもしれませんが、理解して覚えるには、その周辺の情報も把握しないといけないので、丸暗記より少し手間がかかり、つい敬遠してしまいます。
けど、それは決して遠回りではなく、近道になると断言します。特に会計士試験は理解していないと応用問題に対応できませんでしたから。また、丸暗記だと論述に矛盾ができて、大幅に減点されちゃいます。
ここでは、文章を図で整理することをお勧めします。先程の「整理ノート」の話です。生産管理のツールとして、「QC7つの道具」というのがあるのはご存じですか?簡単に言うと、データを解析し、関係を図解化するものです。
まずは自分なりの整理図を作成してみる
これを使えというわけではなく、あくまでわからなければ図解化して文章を整理し理解しましょう、ということです。文章だと読んでもわけがわからなくとも、マトリックス表や組織図みたいな枝分かれの図にして整理すると一瞬で整理できたりします。
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公認会計士(税理士)の独立開業について
次は、本題の公認会計士(税理士)の独立開業についてお伺いしていきます。
独立開業までの準備は具体的にどんなことをされましたか?
独立開業の直前は、監査法人(現在のPwCあらた有限責任監査法人)で監査業務をしていましたが、退職の2~3ヵ月後くらいに税理士開業登録を行いました。
このため、独立開業の為の準備はほとんど何もしておりませんでした。税理士事務所の物件を探したり、印鑑などの事務用品を買ったり、税理士用の電子証明を取得したり…と事務的なことばかりだったと思います。
実務の修行は?と疑問に思われるかもしれませんが、資格を持っているので、知識は当然あったのと、経理時代に法人の法人税・消費税等の税務申告はやっていました。ですが、それくらいでした。
普通は税理士事務所で修行して…という流れになるのかもしれませんが、その時はとにかく独立したいという一心で、知識はあるので、あとは実際にやりながら覚える!という方針でした(笑)。
開業した際の方針や気を付けていることはありますか?どうやって軌道に乗せましたか?
開業してからの方針としては、まずお客様に信頼を得るところからスタートだと思っています。なので、基本的に初年度の顧問料などは安めにしています(顧問料の価格を下げるかどうかは人それぞれだと思いますが)。
最初は信頼がないからです。その分、お金も時間も赤字覚悟でかなり力を入れてサポートする体制としています。
あとは、税理士が単に資料作成・申請書類を作成する、というだけでなく、できる限り税理士が何の為に何をしているのか、ということをお客様に説明するようにしています。
軌道に乗っているのかどうかはさておいて、少なくともお客様に恵まれているのは大変嬉しいことだと思っています。
現在、どのような分野に力を入れてらっしゃいますか?
税理士業務は勿論ですが、お客様の本業のサポートに力を入れたいと考えています。
例えば、アパレル、小売であればチラシなどの広告があるわけで、そういった広告の手助けとか、このサイトでも受験に有用な情報をもっと提供できればいいなと考えています。
公認会計士(税理士)の魅力は何でしょうか?
公認会計士の魅力は、可能な業務の幅が広いことだと思います。大企業の監査業務を行うことはもちろん、一般事業会社の経理や監査室業務だってできます。起業して監査とは無関係に活躍されてる方もいらっしゃいます。
税理士の魅力は、事業そのものを間接的にサポートする形となることが多いので、基本的にお客様との距離が近いことなのかなと思います。
士業は将来AIに仕事を奪われると思いますか?
まだこれを議論するのは早すぎるのかな、と思います。RPA(人の作業を自動化するツール)ブームも落ち着いた頃かと思いますが、これって騒がれてる割に、たいしたことはできないことが多いです。大量の単純手作業って自動化する依然に、そもそもそれって必要なの?という話になりますので。
AIは基本的に存在する情報からしか物事を判断できないと思うので、やはり人しか判断できないことがあるかと思います。どこまでAIが信頼できるレベルにまで発達するのかはわかりませんが、AIのロジックが複雑になればなるほど、AIの計算結果について、結局のところ人のチェックが必要になるのではと思います。
また、その士業の業務の大部分が単純作業である場合、AIに大部分の仕事を奪われることになりますが、それは本来そうあるべきなのではないかと思います。人は人にしかできない仕事にシフトし、AIと上手く共存できる形が理想なのかと思います。その過程で、どれだけ生産的な仕事を創造して、失業する人を抑えられるか、にかかっているのかと思います。
仕事の大変なことは何でしょうか?
税理士業務だと、やはり節税対策などお金が直接絡んでくるので、検討漏れがあった場合にお客様のキャッシュのマイナスに直接繋がってしまう。そういうプレッシャーがあります。
最後に、公認会計士(税理士)の資格取得、そして独立開業を目指している方にメッセージをお願いします。
大変だと思いますが、応援しています!全速前進!
事務所名 | 濱谷税理士・公認会計士事務所 |
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代表者 | 濱谷 慶史 |
所在地 | 〒675-0115 兵庫県加古川市平岡町一色700-36 |
連絡先 | TEL(FAX)079-436-4011 |
資格登録 | 税理士登録 №136549 公認会計士登録 №3035467 |
取材日:2020年6月24日
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