公認会計士の独学におすすめのテキスト・問題集
更新日:2024年9月21日
公認会計士試験は、受験生の多くが予備校の通学・通信講座を利用しており、完全な独学で合格するのは極めて困難です。
ただし、「短答式試験」に関しては、市販のテキストや参考書を使って独学で合格を目指すことも不可能ではありません。
そこで、このページでは、公認会計士の「短答式試験」対策を中心に、独学におすすめのテキスト・参考書や問題集・過去問を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
【監修者】公認会計士 濱谷慶史 |
|
【執筆者】 |
執筆者紹介 |
公認会計士の市販テキストで独学する際の方針・注意点
まずはじめに、市販テキストを使って独学で勉強する際の方針・注意点からお伝えしておきます。
- 予備校が出版しているテキストを利用するのが効率的
- 短答式試験は市販テキストだけで合格が狙える
- 論文式試験は予備校を利用する”半独学”がおすすめ
- テキストは法改正に対応した最新のものを利用すること
予備校が出版しているテキストを利用するのが効率的
公認会計士の勉強法・勉強時間のページでも解説しているとおり、公認会計士試験の教材は予備校のものを利用するのが最も効率的です。
これは、公認会計士受験生の多くが予備校の通学・通信講座を利用していること、また、市販の教材そのものの数が少ないことが大きな理由として挙げられます。
特に、企業法や選択科目の経営学等は論文式試験用の市販書がありません。
短答式試験は市販テキストだけで合格が狙える
当ページでおすすめする市販教材の中にも予備校出版のものがありますが、対応できるとしても短答式試験までで、論文式試験の全科目を市販教材だけでカバーするのは非常に困難です。
逆に言うと、短答式試験なら市販教材でも十分合格が狙えるレベルです。短答式試験に合格できる基本的なインプットがあれば、あとは論述の対応力が必要になります。
そこで、完全な独学とは言えませんが、市販テキストを利用する場合は、以下でおすすめするテキスト・問題集を利用して短答式対策までをしっかりカバーし、まずは短答式試験に合格しましょう。
論文式試験は予備校を利用する”半独学”がおすすめ
論文式対策については、予備校の上級講座や答練教材でカバーする”半独学”を推奨します。
公認会計士講座を取り扱う主な予備校はCPA・TAC・大原・LEC・クレアールの5校がありますが、いずれも論文式対策のみの受講・教材の購入が可能です。
費用の安さで言えば、クレアール・LECが非常に低価格になっています。例えば、クレアールの上級論文合格コースは20万円以下(割引適用後)と、かなり安く抑えることが可能です。
各予備校の通信講座については、下記関連記事で紹介していますので、参考にしてください。
市販テキストのその他の利用目的
一方、以下の目的で市販テキストを利用することも有用です。
- ① 予備校を利用する予定だが、まずは市販のテキストで学習内容を見ておきたい
- ② 予備校を利用済みで入門コースは終了している。上級は改正論点のみ把握したいので、市販のテキストを利用したい
- ③ 予備校の教材のみを利用する予定で、自分だけで理解可能か確認してみたい
- ④ まだ簿記の1級を勉強中、あるいは合格したところで、会計士を目指すか検討中だが、まずは勉強内容を確認してみたい
- ⑤ 試験対策用というより、より深い理解が得られる専門書を読みたい
また、⑤にあるように、会計士試験対策のために書かれたものではない学者の書いた専門書もあり、こちらについてはむしろ予備校のテキストよりも詳細な内容が記載されていますので、予備校利用者であっても利用するメリットはあります。
テキストは法改正に対応した最新のものを利用すること
なお、公認会計士試験は、改正論点が出題されやすい傾向があります。市販のテキストを利用する際は、法改正に対応した最新のものを利用してください。
受験する年度の試験がどこまでの法改正に対応するかは、公認会計士・監査審査会のホームページの「〇年試験について」→「公認会計士試験の出題範囲の要旨について」の項目で確認できるので、確認しておきましょう。
公認会計士の独学におすすめのテキスト
それでは、公認会計士の短答式試験に独学で合格するための、おすすめテキスト・参考書について紹介していきます。
新版 会計法規集(中央経済社)
まずご紹介するのは、中央経済社の「会計法規集」です。
新版 会計法規集〈第13版〉 著者: 中央経済社 (編集) 出版社: 中央経済グループパブリッシング 発売日: 2023/4/20 ページ数: 1506ページ サイズ: A5判 価格: 2,970円 |
こちらは会計学で利用する法規集となります。
おすすめというより、むしろ公認会計士受験生なら必須のものといえるでしょう。各予備校でも、生徒に同じものを購入させていると思います。
予備校での会計学の理論分野である財務諸表論の授業では、この会計法規集を何度も確認しながら授業を進めています。
会計学の計算分野である簿記に関しては、この法規集を確認することはあまりないでしょうが、その計算方法の論拠はこの法規集に収められています。
通常のテキストよりも詳細に、各論点・条文の理由・背景(結論の背景)についても記載されていますので、インプット期間はこの法規集を繰り返し読むことで、会計の真の理解に繋がります。
論文式試験では法令集が配布されるため、条文そのものの丸暗記は不要ですが、短答式試験では配布されませんので、法規集の読み込みが短答式試験合格の近道への一歩になります。
また、論文式試験で配布される法令集はあくまで条文の箇所だけですので、論文式試験に出題されやすい各論点・条文の理由・背景については読み込むことが必要です。
各条文は、一連の繋がりがあったりしますので、例えば問題を解いたあとに関連する条文を法規集で確認し、その前後の条文も一緒に確認することで、論点の整理がしやすくなります。
ポケット六法(有斐閣)
次にご紹介するのは、 有斐閣の「ポケット六法」です。
ポケット六法(令和7年版) 著者: 荒木 尚志 (編集), 森田 宏樹 (編集) 出版社: 有斐閣 発売日: 2024/9/20 ページ数: 2212ページ サイズ: B6判(一般的なテキストより小さい) 価格: 2,420円 |
こちらは会社法で使用する六法となります。
会計法規集と同様、公認会計士受験生であれば必須の参考書となります。短答式試験対策では、特にこの六法を繰り返し読み込むことが必要です。
論文式試験では試験問題自体は会社法の考え方や判例が問われ、法令集が配布されます。
しかし、論述では根拠となる条文を明記することが必要になるので、論文式試験の勉強でも必要に応じて根拠となる条文がどこにどのように記載されているのかを確認しながら勉強する必要があります。
条文集であるため、基本的に六法であれば他書でも構いません。紹介したポケット六法は持ち運びが容易ですので、便利です。 こちらは縦書ですが、横書きのものなど、好みに合わせて購入されるとよいかと思います。
こちらもテキストや問題集の解説で出てきた条文を六法でも確認し、その前後の条文も確認してみるとよいでしょう。各条文は前後の繋がりがありますので、論点を整理しやすくなります。
スタンダードテキストシリーズ(中央経済社)
次は、 中央経済社の「スタンダードテキスト」シリーズです。
スタンダードテキスト財務会計論I(基本論点編)(第17版) 出版社: 中央経済グループパブリッシング 発売日: 2024/4/11 ページ数: 550ページ サイズ: A5判 価格: 5,500円 |
|
スタンダードテキスト財務会計論II(応用論点編)(第17版) 出版社: 中央経済グループパブリッシング 発売日: 2024/4/11 ページ数: 542ページ サイズ: A5判 価格: 5,500円 |
|
スタンダードテキスト管理会計論(第2版) 出版社: 中央経済社 発売日: 2015/10/15 ページ数: 588ページ サイズ: A5判 価格: 5,500円 |
|
スタンダードテキスト監査論(第7版) 出版社: 中央経済社 発売日: 2024/9/12 ページ数: 582ページ サイズ: A5判 価格: 5,390円 |
市販テキストで公認会計士の勉強をする場合は、中央経済社のスタンダードテキストシリーズがおすすめです。
量が多いですが、その分アウトプットに必要な情報が得られます。
中央経済社のスタンダードテキストシリーズは、以下のものがあります。
- ① 財務会計論 Ⅰ 基本論点編
- ② 財務会計論 Ⅱ 応用論点編
- ③ 管理会計論
- ④ 監査論
市販用ですので、販売されているものが法改正に対応している最新版かどうかの確認が必要です。
内容としては簿記1級の学習者や合格者などで、ある程度理解が進められるレベルですので予備校の講義なしで内容を容易に理解し進めていくのは少し難しいかもしれません。
しかし、財務会計論や管理会計論は、そもそも計算問題を解きながらその背景にある理論を確認すると理解がしやすくなるので、スタンダードテキストを利用する際は計算問題集を解きながら確認することをおすすめします。
※ テキストの事例問題だけでは、しっかり理解したかを確認するのには少し足りないかと思います。
監査論は初学者には最もとっつきにくい科目かもしれませんが、公認会計士試験に合格するための重要なこととして、基礎をしっかり身に着けることが非常に大事になります。
監査論の問題はパターンがあって、問われている形としては見たことがない問題であっても、解答する内容としては本当に基礎的な内容が多かったりするためです。
監査論についても、アウトプットをこなしインプットの内容をどう組み合わせるか、というところが合格の近道になってきますので、スタンダードテキストを利用する際は論述問題を解きながら確認するのが効果的です。
財務会計講義(中央経済社)
次は、中央経済社の「財務会計講義」です。
財務会計講義〈第25版〉 著者: 桜井 久勝 出版社: 中央経済グループパブリッシング 発売日: 2024/3/25 ページ数: 464ページ サイズ: A5判 価格: 4,180円 |
この本は、公認会計士試験だけでなく、簿記試験や税理士試験の簿記・財務諸表論などの会計資格の基本書として評価が高く、基本的な論点も含め会計の各論点を網羅し、綺麗に整理しています。
いわゆる専門書ですが、その内容は小難しいものではなく、財務会計の全体像を把握し、その本質の部分の理解を進めるのに非常に役に立つものです。
著者の桜井氏は、元神戸大学の教授でもあり、直接お世話になった現役会計士の方も多く、また、公認会計士試験の試験委員をされていた経歴があります。
さらに、令和元年から令和4年まで、公認会計士試験の実施・運営を管轄する金融庁の公認会計士・監査審査会会長もされていましたので、もはや公認会計士の世界では、知らない人はいないほどの有名な方です。
発生主義とは?実現主義とは?収益費用の対応原則とは?実現可能性とは?こういった基本的な考え方については特に本質を理解されている方が書かれているので、予備校のテキストよりも参考になる部分があるかと思います。
基本書として、まず一読することをおすすめします。
原価計算(国元書房)
次は、国元書房の「原価計算」です。
原価計算 著者: 岡本 清 出版社: 国元書房 発売日: 2000/4/10 ページ数: 990ページ 価格: 9,900円 |
こちらは管理会計のうち、原価計算分野の理論書として一読してほしい専門書です。著者は一橋大学の名誉教授であり、原価計算の大御所ともいえる有名な岡本清先生です。
この本は2000年に出版されたものですが、原価計算に関しては本質的に今と大きく変わる部分はなく、現在でも十分参考となる内容が織り込まれています。
価格が高いですが、ページ数は1,000ほどあり、そのボリュームもすごいです。あくまでメインテキストの副読本として、利用すれば効果的かと思います。
さすが原価計算の大御所が書かれた本だけあって、原価計算の本質を理解することができます。
個別原価計算、総合原価計算、標準原価計算などの基本的な原価計算の方法や仕損・歩留、加工進捗度の計算など、原価計算は基本的にT勘定などの図を描いたりして機械的に解けてしまうことが多いので、出題の仕方にクセがあったり、見たことのない出題形式だったりすると利用していたメソッドが利用できず、対応できなかったりします。
なぜそういう計算になるのかを理解したうえで解けば応用問題にも十分対応可能です。そういった意味で、原価計算の本質を理解することができる良い本だと思います。
公認会計士のおすすめ問題集・過去問
次は、公認会計士試験のおすすめの問題集・過去問についてのご紹介です。
公認会計士試験 一問一答問題集シリーズ(LEC)
問題集の一番のおすすめは、LECの「公認会計士試験 一問一答問題集」シリーズです。
公認会計士試験 短答式試験対策 一問一答問題集 財務諸表論(2024年12月版) 【LECオンラインショップ直販】 著者: 東京リーガルマインド LEC総合研究所 出版社: 東京リーガルマインド 価格: 3,630円 |
|
公認会計士試験 短答式試験対策 一問一答問題集 管理会計論(2024年12月版) 【LECオンラインショップ直販】 著者: 東京リーガルマインド LEC総合研究所 出版社: 東京リーガルマインド 価格: 3,630円 |
|
公認会計士試験 短答式試験対策 一問一答問題集 監査論(2024年12月版) 【LECオンラインショップ直販】 著者: 東京リーガルマインド LEC総合研究所 出版社: 東京リーガルマインド 価格: 3,850円 |
|
公認会計士試験 短答式試験対策 一問一答問題集 企業法(2024年12月版) 【LECオンラインショップ直販】 著者: 東京リーガルマインド LEC総合研究所 出版社: 東京リーガルマインド 価格: 3,850円 |
こちらは短答式試験対策としておすすめの問題集です。
予備校のLECが発行している本で、以下の科目のシリーズとなっています。
- ① 財務諸表論
- ② 管理会計論
- ③ 企業法
- ④ 監査論
非常にコンパクトにまとまっており、網羅性もなかなかで、他の予備校の生徒でもこの一問一答問題集を利用していたりします。
大原簿記専門学校の会計士講座などでも一応、短答式問題集はありますが、サイズ感、解説の丁寧さなどあらゆる面でこちらの問題集の方が使いやすいと思います。
ただし、Amazonで購入できるのはKindle版のみとなります。紙での書籍は、LECのオンラインショップで購入が可能です。 また、サンプルPDFも閲覧可能なので、ぜひ購入の検討をしてみてください。
短答式試験の直前期には、各予備校の短答式対策答練と併せて利用したい問題集です。
公認会計士試験[論文式]監査論 セレクト30題(中央経済社)
次は、中央経済社の「公認会計士試験[論文式]監査論セレクト30題」です。
公認会計士試験[論文式]監査論 セレクト30題<第6版> 著者: 中里 拓哉 (著), 大澤 豊 (著), 南 成人 (監修) 出版社: 中央経済社 発売日: 2020/4/15 ページ数: 280ページ 価格: 3,410円 |
こちらは監査論の論文式試験対策用の問題集となります。
公認会計士試験の市販の論文式対策用の理論問題集そのものが珍しいのですが、この監査論セレクト30題は、良問を厳選していて、論文式の応用問題に対応できる力を身につけることが可能です。
セレクトされた30問以外に、重要論点の総まとめと過去問研究用の項目も収録されています。
セレクトされた30問は、それぞれ複数の小問で構成されています。
論文式試験の監査論の怖いところは、問題文にクセがあって、何を問われているのかがわからず論点ズレを起こす場合があることです。
実際に問題の解答を見てみると、問われていることは基礎問題でも出ているような内容で、解答すべきことは大した内容でもなかったりすることが多いです。
この監査論セレクト30題では、過去の試験問題などの傾向から、そういった問題に対応できるような問題文の読解力と対応力を養うことができるでしょう。
問われていることさえわかれば、あとは法令集から文章をピックアップして書き写せばよいだけのような問題もあります。
論文式試験は得点率による合否基準が設けられていますから、一つの問題に対する論点ズレは致命的です。この問題集をある程度こなせば、監査論に対する苦手意識もなくなるでしょう。
大原の公認会計士受験シリーズ 短答式対策 財務会計論(計算)
次は、 「大原の公認会計士受験シリーズ」です。
大原の公認会計士受験シリーズ 短答式対策 財務会計論(計算) (8版) 著者: 資格の大原 公認会計士講座 出版社: 大原出版 発売日: 2023/5/1 ページ数: 299ページ サイズ: A5判 価格: 2,420円 |
こちらは大手予備校の大原が出版する市販問題集です。
基本的に短答式試験の理論対策はLECの一問一答が優秀ですが、財務会計論の計算に関してはこちらの問題集を有効活用するとよいでしょう。
内容は大原の公認会計士講座の短答式問題集に即しているので、内容的にはある程度本番合格を見据えた方が対象ですので、それなりの難易度になるかと思います。
また、近年の試験傾向を踏まえ、連結会計・企業結合の論点についても充実した内容となっています。
全部で100題が厳選されており、短答式ならではの対応方法が養われるよう問題が作成されています。
短答式試験の財務会計論の計算は、論文式試験対策だけでは不十分と言えるのは、論文式試験には出題されにくい論点が出題されたり、幅広い分野からの出題可能性があることと、解答の選択肢から答を導きだすような短答式特有の問題などがあるためです。
この問題集は、そのような短答式特有の分野や問題に対応できるよう意識して作成されています。