更新日:2023年8月7日
中小企業診断士試験をこれから受験しようとお考えの皆さんは、試験はいつ実施されるの?試験制度はどうなっているの?試験は難しいの?など気になっているのではないでしょうか。
そこで、このページでは、中小企業診断士試験の試験日程や試験内容、難易度などの試験概要について、ご紹介していきたいと思います。
【監修者】 中小企業診断士 中井 一 2010年に中小企業診断士の資格を取得。企業内診断士として経験を積んだ後、2019年に独立を果たす。その他、行政書士、簿記1級、FP2級、キャリアコンサルタント等の資格も保有するなど資格試験に精通している。⇒監修者紹介 |
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【執筆者】㈱モアライセンス代表 大西雅明 |
![]() 執筆者紹介 |
中小企業診断士試験とは?
中小企業診断士試験は、平成12年の中小企業支援法の改正により国家資格となり、平成13年度から国家試験として実施されるようになりました。
中小企業診断士試験には、「1次試験(筆記)」と「2次試験(筆記・口述)」があり、中小企業支援法に基づく経済産業大臣指定試験機関として、一般社団法人 中小企業診断協会が実施しています。
この1次試験・2次試験に合格後、15日以上の「実務補習を修了(又は実務に従事)」することにより、中小企業診断士の資格を取得することができます。
なお、1次試験合格後、2次試験を受けずに、中小企業基盤整備機構又は登録養成機関が実施する養成課程を修了することで、「2次試験+実務補習(実務従事)」に代える方法もあります。
それでは、「1次試験」⇒「2次試験」⇒「実務補習・実務従事」の3つのステップと「養成課程」について、以下で順に解説していきます。
第1次試験(筆記)の試験日程・試験内容
中小企業診断士の1次試験は、中小企業診断士に必要な知識があるかを判定することを目的に、企業経営に関する7科目について、多肢選択式(マークシート方式)による筆記試験が行われます。
試験日は8月上旬の土曜日・日曜日
中小企業診断士の1次試験は、例年、8月上旬の土曜日・日曜日の2日間で実施されています。
試験時間は、60分又は90分を1コマとして、それぞれに各試験科目(7科目)が割り当てられています。
試験日程【2023年度】
2023年度(令和5年度)の中小企業診断士1次試験の試験日程は、以下のとおりです。
申込期間 | 令和5年4月27日(木)〜5月31日(水) ※消印有効 ⇒一般社団法人 中小企業診断協会 ![]() |
試験日 | 令和5年8月5日(土)・6日(日) |
合格発表日 | 令和5年9月5日(火) |
受験資格 | 年齢・学歴等に制限はなく、誰でも受験可能 |
試験会場 | 札幌・仙台・東京・名古屋・金沢・大阪・広島・四国・福岡・那覇の10地区 ※金沢と四国は令和5年度から新たに試験的に実施 |
受験手数料 | 14,500円 |
試験日 | 試験時間 | 試験科目 | |
8月5日(土) | 午前 | 9:50〜10:50 | 経済学・経済政策 |
11:30〜12:30 | 財務・会計 | ||
午後 | 13:30〜15:00 | 企業経営理論 | |
15:40〜17:10 | 運営管理 (オペレーション・マネジメント) |
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8月6日(日) | 午前 | 9:50〜10:50 | 経営法務 |
11:30〜12:30 | 経営情報システム | ||
午後 | 13:30〜15:00 | 中小企業経営・中小企業政策 |
試験内容
中小企業診断士 1次試験の試験科目・配点・出題形式・合格基準は、以下のとおりです。
試験科目 | 7科目〔@経済学・経済政策 A財務・会計 B企業経営理論 C運営管理(オペレーション・マネジメント) D経営法務 E経営情報システム F中小企業経営・中小企業政策〕 |
配点 | 各科目100点満点・合計700点満点 |
出題形式 | マークシート方式(多肢選択式) |
合格基準 | 総点数の60%以上、かつ、1科目でも満点の40%未満がないことを基準とし、試験委員会が相当と認めた得点比率とする。(※) |
※ 「試験委員会が相当と認めた得点比率」とは、原則として「総点数60%、かつ、40%未満の科目がないこと」が合格基準ですが、試験委員会が、そのパーセンテージを調整する場合があることを意味しています。
科目合格・科目免除制度
中小企業診断士の1次試験には、「科目合格」や「科目免除」といった制度が用意されています。
科目合格
まず、科目合格というのは、1次試験に合格できなかった場合(総点数が60%に満たなかった場合、又は、40点未満の科目があった場合)でも、一部の科目にのみ合格できる制度です。
科目合格した試験科目については、翌年度・翌々年度において、その試験科目の免除を受けることができます。(有効期間は2年間)
この科目合格の基準は、満点の60%以上で、試験委員会が相当と認めた得点比率とされています。
科目免除
次に、科目免除というのは、他資格を保有していることにより、試験科目の免除を受けることができる制度です。
代表的なものを挙げると、以下のような科目免除があります。
免除対象者(代表的なもの) | 免除科目 |
経済学の教授、経済学博士、不動産鑑定士試験合格者など | 経済学・経済政策 |
公認会計士試験合格者、税理士試験合格者など | 財務・会計 |
司法試験合格者など | 経営法務 |
技術士(情報工学部門登録者)の有資格者、情報処理技術者試験合格者(ITストラテジストその他)など | 経営情報システム |
第2次試験(筆記・口述)の試験日程・試験内容
中小企業診断士の1次試験に合格すると、2次試験に進むことができます。
2次試験には、筆記試験と口述試験の2段階あり、筆記試験の合格者のみが口述試験に進むことができます。
この2次試験では、中小企業診断士に必要な応用能力があるかを判定することを目的に、中小企業の診断及び助言の実務事例と助言に関する能力が問われます。
試験日程【2023年度】
2次試験は、例年10月下旬の日曜日に実施されています。
2023年度(令和5年度)の中小企業診断士2次試験の試験日程は、以下のとおりです。
申込期間 | 令和5年8月25日(金)〜9月19日(火) ※消印有効 ⇒一般社団法人 中小企業診断協会 ![]() |
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筆記試験 | 試験日 | 令和5年10月29日(日) |
合格発表 | 令和6年1月11日(木) | |
受験資格 | 1次試験合格者(合格年度とその翌年度に限る。) ※2000年度以前の1次試験合格者は1度に限り受験可能 |
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口述試験 | 試験日 | 令和6年1月21日(日) |
最終合格発表 | 令和6年1月31日(水) | |
受験資格 | 当該年度の2次試験(筆記試験)合格者 ※口述試験を受ける資格は当該年度のみ有効 |
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試験会場 | 札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・広島・福岡の7地区 | |
受験手数料 | 17,800円 |
筆記試験
2次試験の筆記試験は、1次試験とは違い、「記述式」で下記の試験科目について実施されます。
試験時間 | 試験科目 | |
午前 | 9:40〜11:00 | 【中小企業の診断及び助言に関する実務の事例T】 組織(人事を含む)を中心とした経営の戦略及び管理に関する事例 |
11:40〜13:00 | 【中小企業の診断及び助言に関する実務の事例U】 マーケティング・流通を中心とした経営の戦略及び管理に関する事例 |
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午前 | 14:00〜15:20 | 【中小企業の診断及び助言に関する実務の事例V】 生産・技術を中心とした経営の戦略及び管理に関する事例 |
16:00〜17:20 | 【中小企業の診断及び助言に関する実務の事例W】 財務・会計を中心とした経営の戦略及び管理に関する事例 |
配点 | 各科目100点・合計400点満点 |
出題形式 | 記述式 (設問ごとに20文字から200文字程度の文字数制限あり) |
合格基準 | 総点数の60%以上、かつ、1科目でも満点の40%未満がないこと |
口述試験
口述試験は、口頭で出される質問に対して、口頭で答える試験です。
筆記試験で出題された事例をもとにした質問が、1人10分程度の面接形式で出題されます。
実施方法 | 中小企業の診断及び助言に関する能力について、筆記試験の事例などをもとに、個人面接で実施。 実施時間約10分間 |
合格基準 | 口述試験で評定が60%以上であることを基準とする。 |
2次試験合格の有効期間
2次試験の合格には有効期間があり、合格後3年以内に実務補習(又は実務従事)を受ける必要があります。
もし3年を経過してしまうと、中小企業診断士となる資格を取得するには、改めて1次試験から受け直す必要がありますので、注意が必要です。
中小企業診断士の実務補習・実務従事
中小企業診断士試験に合格後3年以内に、15日以上の実務補習を修了するか、又は、15日以上の実務に従事することにより、中小企業診断士として登録することができます。
実務補習
実務補習では、6名以下のグループを編成し、指導員の指導のもと、実際の企業に対して経営診断・助言を行います。
対象者 | 中小企業診断士試験の第2次試験合格者で、3年を経過していないもの |
実施時期 | 2月・3月(5日間コース・15日間コース) 7月・8月・9月(5日間コースのみ) |
実施地区 | 札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・広島・福岡 |
受講手数料 | 5日間コース:60,000円(税込み) 15日間コース:178,600円(税込み) |
1社あたり5日間で、計3社に対し、現場診断・調査、資料分析、診断報告書の作成、報告会などを行います。
1日目 | 受講者グループ別のミーティング・調査企業の訪問・調査、資料分析等 |
2日目 | 対象企業を訪問し、調査・資料分析などを実施 (自主作業)受講者・指導員間で、調査した企業の経営課題の抽出や診断報告書の作成準備 |
3-4日目 | 報告に向けての調整、診断報告書の作成・修正 |
5日目 | 調査企業への報告会を実施 |
・登録実務補習機関
一般社団法人中小企業診断協会(実務補習)
実務従事
実務従事は、実務補習のように実務の場を提供してもらえるわけではありませんので、自ら対象企業を探して、診断実務に従事しないといけません。
コンサルティング会社に勤務している方などは、そこで診断業務を行うことができますが、そうでなければ診断を受けてくれる企業を自分で探して、診断業務を実施する必要があります。
養成課程・登録養成課程
1次試験合格後、2次試験を受けずに「養成課程(又は登録養成課程)」を修了するという方法もあります。
独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小企業大学校東京校)が実施する養成課程や登録養成機関(全国各地の大学等)が実施する登録養成課程を修了することで、2次試験と実務補習(実務従事)に代えて、中小企業診断士の登録資格を得ることができます。
例えば、中小企業基盤整備機構の養成課程では、6ヶ月間みっちりと、事例に基づく演習と企業診断実習を通じて、実務能力を養成するカリキュラムが用意されています。
登録養成機関の一覧は、中小企業診断士関連情報(中小企業庁)をご参照ください。
中小企業診断士試験の難易度は?
中小企業診断士試験の合格率は、1次試験・2次試験を合わせると、約6%になっており、国家資格の中でも難易度の高い資格です。
1次試験・2次試験ともに、あらかじめ合格基準が定められていますので、形式的には絶対評価の試験ですが、1次試験がマークシート方式であるのに対し、2次試験は記述式となっているため、その採点基準はブラックボックスで、実質的には相対評価方式と言われています。
受験者数は年々増加している
中小企業診断士試験(1次試験)の受験者数は、第1回目(平成13年)に約1万名でスタートしてから増加傾向にあり、令和4年度には、20,212名で過去最高を記録しました。
増加の背景としては、コロナ禍において経営分析や事業再編など経営の見直しを検討する中小企業が増加したことに伴い、経営の専門家である中小企業診断士への期待が高まっていることが考えられます。
1次試験・2次試験を合わせた合格率は約6%
中小企業診断士の1次試験の合格率は、20〜40%前後で変動しながら推移しており、2次試験の合格率は18%で一定しています。
そして、この1次試験・2次試験を合わせた合格率は、過去5年では4%〜8%しかありません。
このため、中小企業診断士試験は、合格率が6%しかない難関資格といえますね。
年度 | 1次試験合格率 | 2次試験合格率 | 合計合格率(1次×2次) |
H29 (2017) |
21.7% | 19.4% | 4.2% |
H30 (2018) |
23.5% | 18.8% | 4.4% |
R1 (2019) |
30.2% | 18.3% | 5.5% |
R2 (2020) |
42.5% | 18.4% | 7.8% |
R3 (2021) |
36.4% | 18.3% | 6.7% |
R4 (2022) |
28.9% | 18.7% | 5.4% |
- 難易度の詳細はこちら⇒中小企業診断士の難易度は?偏差値・合格率・勉強時間で徹底比較!
まとめ
中小企業診断士試験の合格率6%というのは、難易度的には社会保険労務士試験と同等で、難易度の高い資格に分類されます。
合格するためには相当な努力が必要で、800時間〜1,300時間程度の勉強時間を要しますが、これも社会保険労務士試験と同等です。
ただし、公認会計士試験や税理士試験、司法書士試験や不動産鑑定士試験など超難関資格といわれる資格試験は3,000時間程度の勉強時間が必要とされていますので、勉強時間だけで比較すると、それらの3分の1程度の難易度といえます。
中小企業診断士試験は、中心となる組織人事・マーケティング・生産管理・財務会計のほか、経済学や経営法務、情報システム、中小企業政策など経営に関する幅広い分野の知識が必要となるため、企業経営に関してまったく触れたことのない方は、平均以上に時間がかかってしまう可能性があります。
しかし、中小企業診断士試験に合格できるだけの知識を身に着けることができれば、経営コンサルタントとして独立する際に役立つだけではなく、企業内でキャリアアップする場合にも多くのメリットがありますので、それだけの努力をする価値がある資格です。
- 合格率は約6%(1次30%・2次18%)の難関資格
- 合格に必要な勉強時間は800〜1,300時間
- 社会保険労務士と同等の難易度
- 独学が不安な方はこちら⇒中小企業診断士のおすすめ通信講座ランキング